オランダ、ドイツ、ルクセンブルク、フランスと国境を接し、西ヨーロッパの中心部に位置するベルギー。首都のブリュッセルにはEU本部やNATOなどの機関が集まり、さまざまな文化が交わる、ヨーロッパの十字路とも呼ばれてきた国だ。
ここで特筆したいのは、ヨーロッパを代表する美食の国であること!面積は日本の関東地方ほどながら、農耕や牧畜に適した国土を持ち、多種多様な野菜、良質な肉はもちろん、新鮮な魚介類、山の幸なども豊富に揃う。そう、ベルギーは、多彩な食材とともに独自の食文化を発展させてきた、美味しいものの宝庫だ。
ワーテルゾーイとは、ベルギー北部、フランデレン地方の郷土料理で、クリームを入れた鶏肉の煮込み料理のこと。かつて商人の街として華やかに栄えた都市・ヘントが発祥の地とされ、中世から親しまれていたというから歴史は古い。
鶏肉と一緒にじゃがいもや人参、玉ねぎなどの野菜をゆっくり煮込んだスープは、サラッとした口当たりが特徴。卵黄と生クリームを入れることで、軽さがありながらリッチでこくのある味わいに仕上がる。
酪農が盛んに行われている
中世の街並みが残る古都・ヘント
もともとは、ヘントで捕れる川魚を煮込んだことが料理の始まりだそう。しかし災害や河川汚染などの影響から、より手に入りやすい鶏肉が代用されるようになり、いつしか主流になったのだとか。鶏肉の使用が一般的となった今も、海老や白身魚といった魚介や、兎肉が使われるレシピもある。レストランや地域によって具材が変わるのも楽しみのひとつだ。
現在では国民食として愛され、季節を問わず楽しまれているワーテルゾーイ。それでも、凍える季節にこそじっくり味わいたくなる、冬にぴったりの一品だ。クリーミーなスープが、冷えた体をしみじみと、優しく美味しく温めてくれる。
旅のきっかけになる、2つのコラムを隔月で連載中!