人口の多くがヨーロッパ系移民の子孫とされるアルゼンチン。ピザ、チョリソ、パスタなど、イタリアやスペインから受け継いだおいしい料理がたくさん日常に根付いている。そのなかのひとつ、家庭料理としてすっかりお馴染みのエンパナーダは、スペインの移住者から伝わった具入りのパンのことだ。レストランや屋台でも売られ、小腹が空いたらパクッとつまんでお腹を満たす、いわば軽食の代表格といったところ。

 

 作り方はミートパイのようなイメージで、薄く伸ばしたパン生地にジューシーな具材を包み込み、オーブンで色よく焼き上げる。メインとなる具材には、牛ひき肉、鶏肉、ハム、チーズ、玉ねぎ、ほうれん草など、好みの肉や野菜をたっぷりと。スパイスで香り高く仕上げるのが特徴だ。オーブンで焼き上げるほかに油で揚げることもあり、また、フルーツを具材にしてデザートとしていただくなど、地方やお店によってさまざまな種類が楽しめる。

ブエノスアイレス ボカ地区のカラフルな家々

アルゼンチンで生まれたタンゴのダンス

 料理に限らず、ヨーロッパ移民の影響を大きく受けて発展してきたアルゼンチン。彼らが築いた大都市ブエノスアイレスは、ヨーロッパ風の街並みが続く美しい街だ。その南東に位置するのが、現在カラフルな建物が立ち並ぶボカ地区カミニート。家々の屋根や壁を多彩に塗り分け、陽気で活気ある雰囲気に包まれる。

 

 ここはかつて、アルゼンチン初の港町として移民たちが足を踏み入れた場所だった。労働者や船乗りが集まる下町の小さな酒場で、多種多様な文化と風習が混じり合い、あの魅惑的なアルゼンチンタンゴが生まれたという。もちろん、今も変わらず、タンゴはこの地で深く愛されている。日差し溢れる昼の路上で、華やかな夜のレストランで、官能的な、あるいはごく素朴な、昔ながらのタンゴのダンスと旋律がいつだって存分に楽しめるのだ。

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