オーストラリア大陸から北に160km。赤道のすぐ南に、グリーンランドに次いで世界で2番目に大きな島が浮かんでいる。ニューギニア島だ。島の西半分はインドネシア領土であり、東半分とその周辺の島々がパプアニューギニアに属する。面積は日本の約1.25倍。島中央には4,000mを超える山々が連なり、大小の河川が各地へ流れる。高地を除き、起伏の富んだ地形に壮大な熱帯雨林が広がっている。
国土の大部分に手つかずの自然を残していることから、世界でも最も豊かな生物多様性を有する地域のひとつとして知られている。それはまるで現代の奇跡のように、多種多様にきらめく生命の宝庫。地球最後の秘境と称される所以だ。
深く鬱蒼とした森は鳥の楽園でもある。餌となる果実や昆虫が豊富な一方で、天敵の存在は極めて少ない。密林をさらに分け入れば、そこは美しき極楽鳥の世界となる。極楽鳥は、正式な和名をフウチョウ(風鳥)といい、華やかな羽とダンスで、オスがメスを誘惑する変わった生態を持つ。現在知られている約40種のうち、そのほとんどの30種以上が希少な固有種であり、この地では古くから大切な存在として敬われ、親しまれてきた。幸福のシンボルとして国旗にもデザインされているほどだ。
酪農が盛んに行われている
中世の街並みが残る古都・ヘント
国旗に描かれているフウチョウは、体長30cmを超えるアカカザリフウチョウである。オスは、胸の脇に鮮やかな朱色の飾り羽を持ち、繁殖期になると羽を大きく広げて求愛のダンスを繰り広げる。羽の朱色が密林の濃い緑にいっそうくっきりと美しく映える瞬間だ。
現在、パプアニューギニア政府は種の保全のためにフウチョウの輸出を禁止している。しかし脅威は常に存在する。森林伐採による生息地の消失、さらには、美しい羽を求めた不正な取引がいまだに続くとされている。楽園に住まう鳥たちが何百年も繰り返してきた求愛のダンス。種の存続のために、密猟の厳しい取り締まりと、何より豊かな森の環境を守り抜いていくことが不可欠である。
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