世界中で造られているビール。最大の醸造国のひとつであるベルギーには、とりわけ個性豊かな種類が存在する。国内には大手から小規模まで100を超える醸造所があり、地域に根ざした数多くの醸造所で、地元の農産物を使用したクラフトビールが製造されている。原材料、酵母、発酵方法、アルコール度数も異なる、多種多様なベルギービール。分類することはもはや不可能とまでいわれるほどだ。
ベルギーのビール醸造のルーツは中世に遡る。キリスト教の修道院で盛んに造られていたという。現在でもいくつかの修道院醸造所が残り、当時から続く伝統的な方法で醸造されたビールを実際に楽しむことができる。
発酵途中の白ワイン・フェーダーバイサー
花と一緒に編み上げられた玉ねぎ飾り
ベルギー北部、フランダース地方。その西側の西フランデレン州で製造されているビールにも、何世紀も受け継がれる歴史深いものがある。フランダース・レッドとよばれ、その名前の通りに赤褐色をしたビールだ。通常の大麦の代わりに使用する赤大麦の麦芽の色が、深い赤色をもたらしている。木の樽で約2年かけて長期熟成させるのだが、熟成期間中、野生の乳酸菌の働きかけによって特徴的な酸味のあるビールに仕上がる。さらに、樽に付着したタンニンやカラメルが染みこんで、フルーティな香りや赤の色合いに影響を与えていくという。伝統を大切に守りながら、次世代へと受け継ぐためのたゆまぬ努力が繋いできた、揺るぎのない赤色だ。
2016年、ベルギーの「ビール文化」がユネスコ世界無形文化遺産に登録された。ベルギーでは、ビールは楽しく美しいだけの飲み物ではない。人々のライフスタイルにしっかりと根をおろした、まさに文化そのものといえるのだろう。
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