日本
福島県 会津地方
会津漆器
福島県会津地方で作られている漆器、会津塗(あいづぬり)。職人の高い技術によって生み出される美しく堅固な器だ。歴史は深く、その起こりは16世紀後半に遡る。江戸時代になると海外に輸出もされ、産業として大きく発展。しかし、幕末の戊辰戦争の戦火により会津の地は荒廃し、漆器生産も困難に陥る。それでも明治中頃には活気を取り戻して復活。日本有数の一大産地として現代に至っている。
緑深き山々と清らかな川、豊かな自然に恵まれたこの地で、400年以上育まれ、磨かれた技術。受け継がれる人々の思い。守られてきた伝統が、ひとつの椀に、一枚の皿に、宿り続ける。
貴重な朱を使用した漆器は、古の時代から高貴な存在として大切にされたという。祝い膳には朱塗の本膳を用いるのが習わしで、現代にも、お正月や特別な日に振る舞われる郷土料理「こづゆ」をいただく際、朱塗の小さな椀に取り分ける風習が残る。おもてなしの思いが込められた「こづゆ」と、作り手たちの温もりが宿る器。気品をまとう惚れ惚れと美しい赤に、野菜たっぷりのお吸い物がよく映える。ふくふくと心豊かに満ちる、晴れの日の幸福な光景だ。
さあ、至情の赤を求めて。
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