カリフォルニア州の中央部。シエラネバダ山脈の西山麓に広がるヨセミテ国立公園。国立公園への指定は1890年と古く、130年以上の歴史を誇る。年間来場者は優に300万人を超え、全米で人気のある国立公園のひとつだ。

 

 面積は3,083km2。そのおよそ9割は人の手が加わっていない原生地域だ。自然のままの景観が残され、標高によって異なる、多様性に富んだ動植物の生息地として、豊かな生態系が育まれている。

大勢で取り分けて食べるお祝いの料理

ナシ・クニンの材料になるターメリックやココナッツミルク

 公園のほぼ中央に、氷河に削られたU字型の谷、ヨセミテバレー(ヨセミテ渓谷)がある。深さ約1,000m、幅約1,600m。巨大な岩山と雪解け水が流れ落ちる無数の滝が、見る者を圧倒していく。

 

 バレー入り口に鎮座するのは、ロッククライマーの聖地でもあるエル・キャピタン。花崗岩としては世界最大の一枚岩であり、谷底から1,000mの高さに垂直にそびえ立っている。

 

 そのエル・キャピタンの東側に、冬にのみ流れ落ちる滝がある。ホーステール・フォールだ。

 

 凍てつく2月の日没時のこと。天候の条件が揃ったときにだけ、ホーステール・フォールは太陽によって赤く染まり、ファイア・フォール(炎の滝)が出現する。流れ落ちる水が夕陽の赤を反射して、溶岩のように輝く。雪と氷の世界で起こった魔法のように美しい光景だが、しかし、確かに現実なのだ。幻想的な自然現象、驚異の景観。これらを生み出す大自然の力を私たちが今堪能できるのは、守ろうと尽力した人々がいたからだろう。そして、現在もなおその努力は続けられている。

 

 世界で初めて、国家が自然を保護する国立公園制度を定めた国、アメリカ。その美しく偉大な精神が、世界中から訪れる人々を楽しませている。

 

旅のきっかけになる、2つのコラムを隔月で連載中!