真っ赤なスポンジに白いクリームが印象的なレッド・ベルベット・ケーキ。イギリスでは日常に親しまれる定番のお菓子だ。赤と白のコントラストが美しく、バレンタインのスイーツとして人気があるというのも頷ける。由来や発祥の地については諸説あるものの、古くは19世紀にレシピが存在。当時は、ココアの成分アントシアニンがケーキの材料である重曹と反応することで生地を赤く染めていたそう。現代では、食紅やビーツなどで着色したココア生地に、バタークリームやチーズクリームを合わせるのが一般的。子供も大人もおなじみの味だ。
そして近年人気が再来したのは、よりキュートに、華やかに、カップケーキサイズのものが展開されるようになってからだろう。カップケーキはティータイムに欠かせないイングリッシュスイーツのひとつ。デコレーションも多彩にアレンジされて所狭しと店頭に並ぶ姿は、幼い頃に絵本で見たようなそのままの愛らしさで心が弾む。
南に広がるサハラ砂漠
モロッコ料理に欠かせない多種多様のスパイス
赤いココア生地にクリームチーズをたっぷりフロスティングしたフォトジェニックなカップケーキ。瀟洒なティールームで、お洒落なカフェで、カジュアルなケーキショップで、賑わうマーケットで。つまりは街のあちこちで、赤のケーキが人々の目と舌と心を、軽やかな幸福感で満たしてくれる。ふわりと盛られたクリーム。しっとり、やわらかく崩れる赤いスポンジ。気取らない味わいと可愛いデコレーション。パクッと頬張れば、そう、いつだって喜びに包まれる。あとはただ、つづく赤色の幸福に身を委ねるだけ。
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