真っ青な空と褐色の大地に照りつける灼熱の太陽。美しく穏やかな地中海を望むスペイン南部。ここアンダルシア地方には、白く塗られた家々が立ち並ぶ「白い村」「白い町」が多く点在している。眩しい太陽の光を漆喰の壁が反射して輝き、まるで町全体が絵画から飛び出してきたような世界に魅せられる。
しかし、家が白いことには理由がある。アンダルシアは夏には40度を超える暑さとなるため、太陽の強い光を吸収せずに室内を涼しく保つ工夫がなされているのだ。
初夏を迎えるころになると、白い町の風景が華やかに彩られていく。細い路地に軒を連ねる家々の窓わくやバルコニーを、真っ赤な花でにぎやかに飾り立てるのだ。その花のひとつに、赤いカーネーションがある。可憐でチャーミングなカーネーション。スペインの麗しき国花だ。
地中海沿岸を原産とするカーネーションの歴史は思いのほか古い。古代ギリシャの時代から栽培が始まったとされ、長きに渡ってスペインの地でも人々に愛されてきた。それはたとえば、アンダルシアを発祥とする民族舞踊フラメンコの舞台。歌とギターと、全身全霊で情感を豊かに表現するフラメンコダンサー。その髪を飾る多くが国花であるカーネーションだ。
重なる花弁は、激しく魅惑的なタップと共にたっぷりと広がるスカートのフリルを思わずにいられない。迫力に圧倒される一瞬。国の花が情熱の舞踊に文字通り華を添えるのだ。
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