渡辺 裕希子=文

 ワインで有名なカリフォルニアの中西部に位置し、高級ワインの産地として知られるナパ・ヴァレー。この地域を訪れたらぜひ体験したいのが、ワイン・トレインだ。ナパ・ヴァレーの中心にあるナパ・ワイントレイン駅から北のセントヘレナ駅まで、往復58kmの道のりを、時速30kmのゆっくりとした速度で3時間かけて進む、優雅なグルメ列車。車窓から美しいぶとう畑を眺めながら、本格的なカリフォルニア料理と地元のワインを堪能できる。ワイン好きはもちろん、鉄道ファンにとっても憧れの存在だ。
 車両のタイプは3種類。最も人気があるのはドーム型の大きな天窓をしつらえた展望車の「ビスタドーム」だろう。1952年に製造された車両は、オリエント急行を想わせるアンティークな内装。ベルベットのソファにゆったりと座り、移りゆく景色を眺めながら、フルコースの料理に舌鼓。ドレスアップした乗客も多く、車内は華やかなムードに包まれる。
 1915~1917年製の車両を改装した「グルメカー」は、カジュアルな雰囲気が魅力。往路と復路の2つのグループに分かれて食事を楽しむ2シーティング制。相席になる可能性もあるが、ワインを傾けながらの国際交流が生まれるかもしれない。
 5月~10月の間なら、季節限定の「シルベラード」も選択肢に加わる。冷房を使用しない開放型の車両で、西部劇をイメージした内装が楽しい。開け放した窓からナパ・ヴァレーの清々しい風を感じながら、バーベキュースタイルの料理が楽しめるとあって、ファミリーや若者に人気を集めている。
 ナパ・ヴァレーへ行くには、サンフランシスコから車で約1時間。ワイン・トレインの乗車に加えて、個性豊かなワイナリーの見学や試飲なども体験できる、サンフランシスコ発のツアーもたくさん用意されている。2020年3月29日からJAL国際線では、従来の東京(羽田)-サンフランシスコ線に加えて、東京(成田)-サンフランシスコ線の運航が開始される。ますます行きやすくなったサンフランシスコで、ワインとグルメ、そして列車の旅を楽しみたい。

 

〔グルメカー〕4人がけのテーブル席が並ぶ「グルメカー」。カジュアルな雰囲気で、価格も比較的手頃。

〔カリフォルニア料理〕コース仕立てのカリフォルニア料理が楽しめる。車内の厨房で作られているので、どの料理もできたてで味も抜群。

写真協力:Courtesy of the Napa Valley Wine Train
カリフォルニア観光局