渡辺 裕希子=文
フィンランドのヘルシンキ、スウェーデンのストックホルム、エストニアのタリン、ラトビアのリガなど、バルト海沿岸の美しい都市を結ぶ定期クルーズ船「タリンク&シリヤライン」。2時間程度の気軽なものからキャビンに1泊できるものまで、多彩なルートが用意されている。豪華なクルーズの魅力を存分に味わうべく、ストックホルムからヘルシンキへと向かう約16時間の船旅を体験した。
生演奏に迎えられて船内に入ると、吹き抜けのプロムナードに圧倒される。1階はショップやレストランが並び、2階から上はキャビン。シースルーのエレベーターから見下ろす光景は、船のなかとは思えない開放感と華やぎに満ちている。広々としたデッキには、ビール片手に語り合う大人たちと、元気に遊ぶ子どもたち。煙突から白い煙が上がると、いよいよ出航。絵本の世界から飛び出したようなかわいらしい島の間を縫うように、船は悠々と進んでいく。
「タリンク&シリヤライン」では高級ビュッフェが有名だが、あいにくこの日は満席。手頃なファストフード店で空腹を満たし、船内のスーパーで買ったシャンパンとスナック菓子を手に再びデッキへと向かった。バルト海のサンセットは、船旅のハイライト。水平線を橙色に染めながら、太陽はゆっくりと沈んでいく。やがて眼前に広がる漆黒の海。吹き付ける風の強さに少々怯みながらも、ドラマチックな光景に心を奪われていた。
免税でショッピングが楽しめるのも、クルーズの魅力だ。船内でしか手に入らない限定のムーミングッズや人気の北欧ブランドであるマリメッコの雑貨、化粧品や酒類なども安く手に入り、時間を忘れるほど夢中になってしまう。生演奏が楽しめるパブやカラオケバーもあり、深夜になるとディスコもオープンする。ありとあらゆるエンターテインメントが提供され、眠るのが惜しくなる。
翌朝、ビュッフェレストランで朝食を楽しんだら、ヘルシンキに到着してしまった。まだまだやり残したことがたくさんある。少し奮発してオーシャンビューの客室を選んだのに、遊び過ぎて部屋で景色を眺めなかったことも悔やまれる。いつかまた乗船して、海を見下ろすサウナ&プールやカジノも体験してみたい。後ろ髪を引かれる思いで、ヘルシンキに降り立った。
〔巨大なプロムナード〕長さ142mのプロムナードに、洋服や雑貨、食品などさまざまなショップが並ぶ。JALマイレージバンク会員は、船内ショッピング8%割引特典があり、さらにおトク(対象路線:ヘルシンキ‐ストックホルム、ヘルシンキ‐タリン間/2020年3月31日まで)
〔キャビン〕1~4名まで利用できるオーシャンビューのキャビン。手頃な価格の窓なしタイプや、ムーミンがデザインされたファミリータイプのキャビンなども。
〔デッキで出航前のひととき〕デッキで語らいながら、出航を待つ人々。滑り台などの遊具があるキッズスペースもあり、家族連れの姿も多い。