渡辺 裕希子=文
アドリア海に浮かぶコルチュラ島は、「リトル・ドゥブロブニク」の異名を持つ。たしかに、石畳の細い路地とオレンジの屋根の家々、そして美しい海の組み合わせは、「アドリア海の真珠」と呼ばれるドゥブロブニクの小型版のようだ。だが、テーマパークのように賑やかな世界遺産の街と比べると、こちらは、はるかに静かで時の流れも緩やか。海は一段と透明度が高く、エメラルドグリーンの輝きを放つ。
城壁に囲まれたコルチュラ島の旧市街は、20分程度で一周できるほどコンパクト。だが、ヴェネツィア統治時代の歴史的建造物が残る街並みは、まるで時が止まったように美しく、精緻な装飾に見入ったり、洒落た雑貨店で立ち止まったりと、気ままに散策していると、1日あっても足りないかもしれない。街のランドマークは、14~16世紀にかけて建てられた聖マルコ大聖堂。アドリア海と旧市街全体を360度見渡せる尖塔の鐘楼が、絶景スポットとして知られている。暗く狭いらせん階段を上るのは少し勇気がいるが、その価値は十分にある。
ドゥブロブニクからの日帰りツアーでは、塩づくりの街「ストン」や、試飲を楽しめるワイナリーとあわせて訪れるのが一般的。筆者もこうしたツアーに参加したが、コルチュラ島の滞在時間はわずか3時間ほどと短く、「あの海で泳ぐのはどんなに気持ちが良いだろう」「ライトアップされた夕暮れ時はどれほど美しいだろう」と妄想ばかりが膨らんだ。島にはリーズナブルな民宿から高級ホテルまで、個性ある宿泊施設が点在している。時間に余裕があるならぜひ1泊することをおすすめしたい。
〔旧市街〕南北にメインストリートが貫き、その東西に細い路地が伸びている。上から見ると魚の骨のような形をした、ユニークな街。
〔レストラン〕東側の海に面した通りには、眺めの良いレストランが並ぶ。テラス席に座り、名物の白ワインやシーフードが楽しめる。
〔エメラルドグリーンの海〕家族連れやカップルが気ままに泳ぐビーチ。岩場のほかに砂浜のビーチもあり、地元の人にも人気。