渡辺 裕希子=文
バンクーバーで飛行機を乗り継ぎ、ユーコン川のほとりにあるホワイトホースに降り立った。オーロラベルトの真下にあるこの街は、短い滞在期間でもオーロラに遭遇する可能性が高い、カナダ屈指の観測スポット。子どもの頃からの夢が、かなうかもしれない。4泊6日の旅、チャンスは4回。到着早々、バイソン(バッファロー)の肉やサーモンなど、カナダならではの食材を楽しんだ私は、夜10時発のツアーバスに乗り込んだ。
市内からバスで約30分のところに用意されたヤート(ドーム型テント)で暖を取りつつオーロラの出現を待つ、というのがツアーのプラン。期待を胸にバスから降りた、その時だった。暗闇のなかに浮かび上がる、光の帯。ぼんやりとはしているが確かにオーロラだ。はやる気持ちを抑え、カメラを構える。気温はマイナス10度。それにもかかわらず寒さを感じないのは、現地でレンタルした防寒着のおかげか、はたまた興奮からアドレナリンが出ているのか。30分ほど経った頃、にわかに光が強まり、それはまるで生きているかのように、ゆらゆらと揺れ始めた。オーロラの語源は、ローマ神話に登場する暁の女神「アウロラ」に由来するといわれている。地上に光をもたらしてくれた、美しき女神。夢がかなった実感をかみ締めながら、ひとときのオーロラのダンスに見とれていた。
その後、ある夜には郊外にある洒落たロッジの庭から、別の夜にはチャーターフライトに乗って上空からと、3度もオーロラを観測できる幸運に恵まれた。ホワイトホースのオーロラシーズンは、8月下旬から3月下旬と長期にわたる。6月から9月半ばまでは雄大なるユーコン川でのカヌー、8月下旬から9月にかけては世界遺産「クルアニ国立公園」での紅葉狩り、また一面の銀世界となる11月以降にはアラスカンハスキーがひく本格的な犬ぞり体験など、日中のアクティビティにも事欠かない。“一生に一度の旅”を体験したくなったら、目的地はホワイトホースをおすすめしたい。
〔犬ぞり体験〕街の中心地から送迎付きの犬ぞりツアーが多数開催されている。たっぷり1時間以上体験できる本格的なもの。賢くて人懐っこいアラスカンハスキーとの触れ合いも楽しい。
〔オーロラが見えるロッジ〕ホワイトホースから車で約30分のところにあるロッジ「Boreal Ranch」は、敷地内からオーロラ鑑賞ができる。周辺にはほかにも、スタイリッシュなロッジが点在。