渡辺 裕希子=文

 ビーチリゾートの印象が色濃い沖縄の離島で、異彩を放つのが西表島だ。9割が亜熱帯の原生林に覆われた、ジャングルの島。大小40の川が流れ、河口付近にはマングローブが生い茂る。手付かずの自然を全身で味わうべく、カヌーとトレッキングで「ピナイサーラの滝」を目指す半日ツアーに参加した。

 ツアーガイドに教わったとおりにパドルを動かし、ゆっくりと川を進む。流れは緩やかで、初心者でもほとんど不安を感じない。慣れてきたところでいったん手を止め、大きく深呼吸。生命力豊かなマングローブに抱かれながら空を見上げると、自分も自然の一部になった気分だ。中流付近でカヌーを降り、そこから先は山道のトレッキング。早朝からの雨でぬかるんだ地面は滑りやすく、想像以上に傾斜がきつい。所々這いつくばりながら登ること30分、沖縄最大級の落差を誇る「ピナイサーラの滝」に到着する。滝壺に飛び込んで水遊びをするのがここの醍醐味だが、訪れた時期はまだ肌寒く断念。ツアーガイドが用意してくれた紅茶とお菓子 で、滝を眺めながらのティータイムを楽しんだ。なお、半日ツアーで行けるのは滝壺までだが、1日ツアーなら滝上まで登ることが可能。滝上から見渡すマングローブの森とサンゴ礁の青い海は、さぞかし美しいだろう。体力とスケジュールに余裕があるならぜひ、1日ツアーへの参加をおすすめしたい。

 西表島は東京から約2,100km、沖縄本島から約450kmと遠く離れている。また、島に空港はなく、石垣島からフェリーでの船旅となる。気軽に行ける場所ではないからこそ、国内旅行とは思えないスケールの大きな旅が楽しめるはず。きっと一生心に残る、唯一無二の体験が待っている。

〔ピナイサーラの滝〕落差約55mと、沖縄最大級の滝。沖縄の言葉で「ピナイ」はひげ、「サーラ」は下がったものという意味で、滝が流れる様子が老人のあごひげに見えることから名付けられた。

〔トレッキング〕ピナイサーラの滝壺まで向かうトレッキングは、森林浴をしながら珍しい植物に出合える。