あわび、ふかひれ、カニなどの贅沢な食材や、ときに羊、鴨、熊、鹿も取入れる、月替りの献立は、いつ味わっても期待と想像を超えていく。中国本土を旅した際に、たまたま立ち寄った北京の街場の大衆食堂で本場の味と出会って以来、中国料理に魅了されたという船倉料理長。21歳から数々の名店で修業を積み、2010年よりここ「月居」で料理長を務め、自慢の腕前を披露してくれる。
メニューは「中国割烹」なる和の要素を融合したコースが主体だ。1階カウンター席は無駄のない調理の技を目の前に見られる臨場感と気取らない会話で場を盛り上げる料理人の独壇場。築地に出向いて仕入れた食材、生産者から直送するものを織り交ぜるその日こだわりの食材や、船倉氏のひらめきが生み出す料理の隠し味などを気軽に訊ねながら、すぐ目の前で創られた出来立ての料理をいただける。欄間をはじめとする美しい細工が凝らされた2階のテーブル席もいいが、あらたまった席でない限り、やはりカウンター席をおすすめしたい。
店は赤坂の一ツ木通りを入った路地に位置。高層ビルを背にして佇む懐かしさを感じる昭和の一軒家に白の暖簾が架かる。最高にうまい中国料理を味わいたくなったなら、まず思い出して欲しいレストランのひとつだ。