2011年1月19日、定例記者会見を実施いたしました。
会見での社長のメッセージを掲載させていただきます。
(社長の大西が代表してご挨拶させていただいております。)
日本航空 社長
大西 賢
皆さまご存知のとおり、昨年1月19日に、当社は東京地方裁判所に対し会社更生法の申し立てを行い、即日 同手続きの開始決定を受けるとともに、企業再生支援機構からの支援決定を受けてからちょうど1年が経過いたしました。
本日もJALグループの便が止まることなく、安全に運航を続けることができている、また、再生のチャンスを与えていただいているのも、多額の債権放棄、100%減資など多大なご迷惑をおかけした皆さま、政府・行政機関の皆さま、そして何よりJALをご利用いただいているお客さまをはじめとする広く社会の皆さまのご支援・ご理解の賜物であり、改めて感謝申し上げる次第です。
この1年、コスト削減や不採算路線の徹底的な整理、事業規模に合わせた人員適正化等、できる、または、やらねばならぬ施策は全て実行に移してまいりました。
本年も、年度内の更生手続きの終結に加え、ボラティリティ耐性を備えた企業体質の実現に向け邁進していくことをここにお約束させていただきます。
次に、私は年末年始からこれまでに、成田空港、羽田空港をはじめとして全国14ヶ所の空港をまわり、お客さまへの日ごろのご愛顧への感謝と、再生に向け、懸命に努力してくれているグループ社員、そして協力会社の社員を激励してきました。
搭乗口ではお客さまに、「いってらっしゃいませ」、「ご利用ありがとうございます」とお声をかけさせていただきました。お客さまからは叱咤激励のお言葉を頂戴し、冒頭申し上げました、「お客さまをはじめとする広く社会の皆さまのご支援・ご理解を得ているおかげで今がある」ということを身に染みて感じ、責任の重さを改めて痛感するとともに、絶対に立ち上がってみせる、という強烈な想いを、お客さまを前に改めて誓う機会となりました。
また、グループそして協力会社の社員に対しては、如何なる時も揺るがない安全基盤をしっかり守るように指示したうえで、当社が置かれた現状について説明し、今後、何をしなければならないのか、あるいは現場が抱える課題は何かなど、社員との直接対話を通じ、早期再生へのお互いの思いをぶつけあってきました。グループ、そして協力会社の社員も歯を食いしばって当社再生に協力してくれています。社員及びその家族のためにも、私が率先して身を粉にして業務に当たらなければJALグループの明るい未来の実現、お客さまへの高品質なサービスの提供は実現し得ないということを確信しました。
今年度末までに、当社が乗り入れている国内全ての空港をまわることを目指し、今後も休日などを利用して、お客さまへの御礼と、社員を激励したいと思います。
次に、昨年1月19日以来1年を経過し、これからの新しいJALを創造していくために、企業理念とフィロソフィを新たに策定しました。
企業理念は、その企業の根幹を為すものであり、公明正大で、大義名分のある高い目標を掲げ、これを全社員で共有することで、目標に向かって全社員が一体感をもって力を合わせていくことができると考えております。
JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、
一、お客さまに最高のサービスを提供します。
一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。
これをJALグループの企業理念として定めました。
JALグループに集う全ての社員は、日々、人生や生活をかけ、早期に再生しようと歯を食いしばりながら懸命に働いています。その社員一人ひとりが「JALで働いていてよかった」と思えるような企業を目指し、社会の一員として経済・社会に貢献するんだ、という豊かな人間性があってはじめて、お客さまに最高のサービスを提供することができますし、さらには、企業価値を高めて社会に貢献することができます。
JALグループの社員は、経済的な安定や豊かさに加えて、仕事に対する誇り、働きがい、生きがいといった人間の心の豊かさを求めていくとともに、心をひとつにして一致団結し、お客さまに最高のサービスを提供できるよう、必死の努力をしていかなければなりません。このような考えに基づいて、企業理念の冒頭に「全社員の物心両面の幸福を追求する」と掲げました。
また、「お客さまに最高のサービスを提供する」とありますが、ここで述べるサービスとは、我々がお客さまに提供する全てをサービスとしており、安全・安心もサービスの筆頭に位置するものです。お客さまに感動していただけるようなサービスを常に提供し、世界一の安全性、定時性、快適性、利便性を提供するということを意味しています。
最後に、「企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献する」とありますが、これは、JALグループの全社員が、強い採算意識と不屈不撓の精神をもち、公明正大な方法で努力を積み重ねて利益を上げ、社会貢献等を行うことにより、社会の一員としての責任を果たすということを意味しています。
続いてJALフィロソフィについてもご説明させていただきます。
私たちは、再生のスタートラインに立つにあたって、多くの方々に多大なご迷惑をおかけしたことに対する「お詫び」の気持ちと、再生のチャンスをいただいたことへの「感謝」の気持ちを心に刻み、真摯に反省し、過去と訣別して新しいJALを創っていく所存です。これまでは、会社全体が、“他人任せ”をはじめとした“甘えの意識”に溺れていたのではないかと思っています。加えて、利益についての意識も希薄であったといわざるを得ません。
このような反省に基づき、私たちは一人ひとりの意識を変えていくことが必要と考え、JALのサービスや商品に携わる全員が持つべき意識・価値観・考え方として、JALフィロソフィを策定しました。これにより、私たちは同じ価値観を持ち、日々の業務でそれぞれが正しい判断および行動ができるよう、そして、お客さまに心から喜んでいただき、また、感動していただけることを最高の喜びとして感謝の気持ちを忘れず、お客さまにとって最高のサービスを創造することができるよう全力を尽くしていく所存です。
構成は、2部構成になっており、第1部は、「すばらしい人生を送るために」と称して企業人として、人間としての生き方について述べております。例えば、“人間として何が正しいかで判断する”、“美しい心をもつ”、“常に謙虚に素直な心“で、といった「正しい考え方をもつ」ことや、「熱意をもって地味な努力を続ける」ことを綴っております。第2部は、「すばらしいJALとなるために」と称し、最高の企業集団になるための判断基準を記しております。項目を紹介しますと、「一人ひとりがJAL」、「採算意識を高める」、「心をひとつにする」、「燃える集団になる」、「常に創造する」という項目になります。ひとつひとつの項目の下にさらに小項目がありますが、これらひとつひとつは決して難しいことが書いているわけではありません。人間として、また会社を構成するメンバーの一人として、極めて普遍的なこと、言い換えればあるべき姿が書いてあります。しかし、すべての項目が当たり前のことであれど、果たして実践できているかどうか、胸に手を当てて自らに問うた場合、なかなか実践できていないことが数多くあります。
JALグループは、この企業理念を普遍的な経営の目的、経営の基本とし、また、JALフィロソフィを、今後、私どもが仕事をしていく上での判断基準とすることで、社員が誇りを持って働き、社員同士、切磋琢磨しあい、常に自らを高め、同じ価値観のもと一体感をもって、お客さまに最高のサービスを提供し、社会の進歩発展に貢献する企業を目指してまいります。
次に、当社のロゴマークについてお話させていただきます。この度、当社ロゴマークを新たにすることを決定いたしました。私たちはJALフィロソフィを学び、実践することにより、新たな企業理念を実現して参ります。また、どんなに厳しい苦境であっても立ち向かい打ち勝っていかねばなりません。
JALグループは企業理念で「お客さまに最高のサービスを提供する」「企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献する」ことをお約束しています。JALグループがお客さまの視点に立ち、お客さまが望まれるサービスをご提供し続けていくために、「社員がすぐに行動する力」や「おもてなしの心」、「挑戦する精神」、これらの決意として新しいロゴマークを採用することにしました。
私どもは日本の空の歴史をスタートさせ、当時は人がまだやっていないこと、誰も通ったことのない道を自ら切り拓いてきました。創業当時にあった「自ら切り拓く挑戦の精神」を省み、初心に立ち戻るという反省の意を込め、「鶴丸」をモチーフにしたロゴマークを採用します。かつて鶴丸は、国際社会の中で、挑戦と成長を続ける日本の品格、信頼感、パイオニアスピリットを象徴するものでした。
私どもは、お客さまの想いやニーズを、“心”で感じ取り“心”を込めてお返しすることが何よりも大切であると考えています。長きに亘り日本の文化の中で醸成されてきた繊細さや、お客さまの一歩先を考えた気遣いと思いやりが織り成す“心遣い”を大切にし、お客さまに心から喜んでいただき、感動していただくことを実践してまいります。
私は折に触れ、過去との訣別を宣誓してきました。今、鶴丸を採用する意味は、過去への回帰や復古調の印としてでは決してありません。JALの“原点”、“初心”のシンボルとして採用することを決定しました。“再生”ではなく、“新生JAL”を創っていく、という思いも同時に新しいロゴマークに込めました。
新たなロゴマークのもと、企業理念、フィロソフィを実践し、皆さまから愛される企業に一刻も早くなることをお約束します。
本年4月1日よりこの新しいロゴマークを採用いたしますが、それ以前にデリバリーされる新造機につきましては新しいロゴマークをペイントする予定です。
続いて12月度の経営状況についてですが、現在集計している最中ですが、12月においても、日本航空インターナショナル単体ベース及びグループ連結においても、営業黒字を確保できる見込みです。事業規模縮小で売上げは前年対比で減少するものの、継続的なコスト削減策の着実な実行により黒字を確保出来ていると見通しています。
引き続き、手綱を緩めることなく徹底的な費用削減や営業努力を積み重ね、営業利益の確保に努めてまいります。
私からは以上です。