JAL SHOP 11‐12月 国際線
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瀬戸内海を望む広島県廿日市市桜尾の海辺に堂々と構えるサクラオブルワリーアンドディスティラリー(以下サクラオB&D)。その前身となる中国醸造株式会社は、日本酒に使用する醸造用アルコールを製造する焼酎蔵として大正時代に創業し、幅広くアルコール飲料を製造する総合酒造メーカーとして地元を代表する企業へと成長しました。創業100周年の節目に、次の100年に向けた新規事業として洋酒の製造に本格的に挑戦。広島県産のボタニカルを原料にしたクラフトジンを発売し、さらに桜尾蒸溜所初のシングルモルトをリリースしました。「実は中国醸造では80年代後半までウイスキーを製造していましたが、需要の低迷で休止していました。再開するにあたり、いくつもの海外の蒸留所を訪      ますが、同じ蒸留所で生まれた原酒が、海の近くでの熟成と山のトンネル内の熟成でどう変化するかを楽しめるのが、サクラオB&Dの大きな特長です。」(山本氏)桜尾貯蔵庫は海からの暖かい潮風と山からの冷たい風が届き、一日の中で大きな気温差が生まれることで熟成が早まり、さらに熟成樽に潮の香りがほのかに纏うのに対し、戸河内貯蔵庫では、四季を通じて冷涼な気温を保ち、爽やかな香りと軽快な飲み口が魅力のウイスキーに仕上がります。「熟成に大きな違いがあることで香りや味わいの個性が明確になり、2つのブランドが成立しました。」(山本氏)スモーキーさや濃厚な甘みのある「桜尾」と、軽やかでフルーティーな「戸河内」。しかし今回のJAL限定品はそのイメージを覆す逸品です。「『桜尾』は、ノンピートの原酒を希少なシェリー樽を取り寄せて樽詰めし、桜尾蒸溜所内でも比較的温度差が少ない場所で熟成しました。一方、『戸河内』は、通常ノンピートのものを貯蔵しますが、あえてミディアムピーテッドの原酒をバーボン樽に詰めています。通常の桜尾と戸河内らしさが入れ替わる形で表現された、サクラオB&Dにとって初めてチャレンジしたウイスキーで、個人的にも大切に見守り続けた思い入れの深い樽です。」(山本氏)ね、ウイスキーの熟成環境が味わいに大きく影響を与えるのを知り、広島の気候風土を生かして食の楽しさを伝えたいという会社の理念と一致することから、『広島らしさを感じるウイスキーを造りたい』との想いが固まりました。」(白井社長)製造の責任者には、酒造りに精通した山本泰平氏を抜擢。初めてのウイスキー造りで試行錯誤はあったものの、会社の変革期の挑戦に、失敗は許されない覚悟と必ず良いものを生み出す使命感を持って取り組んだと振り返ります。 「蒸留器は国内でも珍しい、モルトウイスキーとジンの両方に使えるドイツ製のハイブリッドスチルです。現地まで視察に行き特注しました。熟成は蒸留所内の桜尾貯蔵庫と、鉄道用トンネルを再利用した戸河内貯蔵庫の2カ所で行ってい次の100年に向けて特徴が交差した限定品地域が育む2つのブランド個性豊かに花開く海のウイスキー「SAKURAO」・山のウイスキー「TOGOUCHI」穏やかな瀬戸内海と緑が豊かな中国山地に囲まれた立地を生かし、個性の違う2つのウイスキーブランドを掲げる蒸留所のウイスキーが、この度、JAL限定商品として2本同時に登場。17瀬戸内海からの潮風が、原酒の芳醇な味わいを育みます。安芸太田町の山間にある、かつて鉄道用だったトンネルの貯蔵庫。「シングルモルト桜尾」の樽を囲む白井社長(右)と山本氏(左)年齢が近い二人の信頼関係は厚く、良きパートナー。ドイツ・ホルスタイン社に特注した高機能なハイブリッドスチル。海辺に立つ蒸留所。対岸の宮島には厳島神社が鎮守しています。冷涼なトンネル内では森の香りを吸い込みゆっくりと熟成が進みます。This article can also be read in English. See P.18TOGOUCHISAKURAO広島の豊かな風土が育む2つの個性

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