2012年1月17日、定例記者会見を実施いたしました。会見での、稲盛会長、大西社長、植木専務執行役員からの挨拶の概要を以下に掲載いたします。
なお、挨拶の中でふれております、新しい経営体制の詳細につきましては、1月17日付広報発表「当社次期経営体制について」をご参照ください。
日本航空 会長
稲盛 和夫
ただいま司会から紹介がありました稲盛でございます。
はじめに、本日開催した臨時取締役会において、2月に開催予定の臨時株主総会以降の取締役、監査役を内定するとともに、同総会以降の執行役員体制について決定いたしましたので、ご報告させていただきます。
ご高承のとおり、私ども日本航空が破綻してから明後日で丸2年が経ちます。大変多くの関係者の皆様に多大なるご迷惑、ご心配をお掛けしながら、まさにマイナスからのスタートを切ったわけですが、お客様や社会のご期待にお応えできる新しい日本航空を創り、多くの方々からいただいた温かいご恩にお返ししていきたいとの強い想いで、企業再生支援機構様の全面的なご協力をいただききながら、全社員、懸命の努力を重ねてまいりました。
私自身、政府と企業再生支援機構様からの強いご要請を受け、一昨年2月に会長に就任いたしましたが、航空業界には全くの素人でありましたので、大変不安な思いを持ち経営をスタートいたしました。ただ幸い京セラとKDDIという2つの企業を創業し、発展させる過程でどのような企業の経営でも社員の意識を高めるためのフィロソフィと採算意識を高める部門別採算制度、つまりアメーバ経営を導入すれば必ず成功できるはずだと確信して臨みました。
会長就任早々より、幹部だけでなく全社員の意識改革に全力で取り組んでまいりました。また昨年4月からは部門別採算制度を導入することができました。その結果、今日に至るまで、周囲から実現不可能と言われてきた数々のハードルを、全役員、全社員が不屈不撓の一心で一丸となって乗り越え、昨年度は過去最高の利益レベルを、足許の業績についても当初の想定を大幅に上回る数値を達成することができております。この場をお借りしまして企業再生支援機構様をはじめ、関係者の皆様のご支援に心から感謝申し上げたいと思います。また、私を信じ、今日まで厳しい環境の中で、懸命に努力を続けてくれた幹部社員、全社員を大変誇りに思っている次第です。
日本航空は再上場を目指しております。また私は来年には、当初約束をしました任期3年の期間がまいりますので退任させていただく予定です。しかし、私が退任しても、再上場した新生日本航空は株主から信頼され、さらに成長発展していく必要があります。そのためにも私は、日本航空生え抜きのリーダーを中心とした執行体制へ移行することが大変大事だと思っております。そして、航空会社にとっての存立基盤である安全をさらに万全なものとすること、そしてまた、より強固なコーポレートガバナンスの体制を敷いていくことが大変重要であると考えております。
そこで私は一歩退きますが、取締役名誉会長に就任し、これまで2年間最も厳しいときに、私と一緒に意識改革の先頭に立ち、全社員を鼓舞し続けてきてくれた大西社長に代表取締役会長に就任いただくとともに安全も担当していただくことにいたしました。また、路線統括本部長として、部門別採算制度の導入を積極的に進め、リーダーとしての資質を十分持っておられる植木専務に代表取締役社長に就任いただくことにいたしました。その他、専務に2名の方を、また常務に9名の方を昇格させ、できるだけJALプロパー、また現場をよく知っている方々が責任を持って経営を進めていけるような体制にしようと考えた次第です。
今後は、常務以上のメンバーによる常務会を設置し、大西新会長、植木新社長を中心に皆で徹底的に議論を尽くし、衆議を集め結論を出していくような経営にしていきたいと思っております。ただ、まだまだ経営者としての経験が浅い方々ばかりですので、私もできる限り、新しい経営陣がさらに素晴らしい経営ができるように責任を持ってバックアップしていく所存です。
ガバナンスの体制としては、企業再生支援機構の方々が中心となり検討され、社外取締役には甲斐中先生にも就任いただくことになりました。また、監査機能を強化するために、田口役員に監査役に就任いただくことになりました。
私の残された任期のなかでは、ここに登壇しております新会長の大西、新社長の植木をはじめ、日本航空の将来を託すリーダーを育てていくことを最重要課題とし、引き続き責任を持って全力で取り組んでいく所存です。
ご挨拶を兼ねたご説明は以上でございます。ありがとうございました。
日本航空 社長
大西 賢
本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
2月開催予定の臨時株主総会以降、代表取締役会長として、また安全推進本部長ならびに、ご被災者相談室長の任に当たらせていただく旨、内定をいただきました。
2年前の1月19日、当社は破綻をし、広く社会の皆様に多大なご迷惑、ご心配をおかけしました。事業を継続しながらの再生の道をお与えいただき、その間、1便も止まることなく運航ができましたのも、多くの方々のご支援・ご協力のおかげにほかなりません。このことは、ひと時も忘れたことがございません。ご予約の電話で、空港で、或いは機内で、「頑張れ」とお声掛けいただくと、現場の社員のみならず、全社員が本当に勇気付けられました。この場を借りて感謝を申し上げたいと思います。
社長就任の会見時、私は「過去と決別します」と誓わせていただき、今日まで、新しいJALの創生のため、稲盛会長のご指導をいただきながら、とにかくがむしゃらに走ってまいりました。また、国内外の現場にも足しげく通い、会社の置かれた立場を現場の社員と共有するとともに、常に感謝の気持ちを持ち、そして、今日より明日、明日より明後日、日々前進することに全員で取り組んでまいりましたが、今後なすべきことは、まだ山ほどあると認識しております。
新体制下では、会社の存立基盤である安全への取り組みを、愚直に、そして強力に推進するとともに、植木新社長をしっかりと支え、全役員、全社員一丸となって、お客様そして社会の皆様からいただいたご恩を少しでもお返しできるよう、更にご期待にお応えできるよう全力を尽くしてまいる所存でございます。
今後とも日本航空を厳しい目で見ていただき、ご指導いただきますようお願い申し上げます。
日本航空 専務執行役員
植木 義晴
ただいまご紹介にあずかりました、植木義晴と申します。今後ともよろしくお願いいたします。
私は入社以来、約35年にわたって運航乗務員、すなわちパイロットの仕事をしてまいりました。2年前、飛行機の操縦桿を自らの意志で置きまして、その代わりにJALという会社の経営の舵取りをするという決断をいたしました。その後、会社更生法申請後の第1期執行体制の中で執行役員として、運航本部を担当いたしました。また至近の1年では専務執行役員となり、部門別採算制度の中核にあります路線統括本部を担当してまいりました。なお、社長となりましても引き続き路線統括本部長を兼務いたします。
この2年間を振り返りフライトに例えてみますと、最初の1年は安全で確実な離陸をすることにのみ神経を集中した1年でございました。次の1年、ようやく離陸に成功したと思った矢先、東日本大震災という未曽有の災害が発生しました。これまでに経験したことのない厚い雲に入り、この影響がどれほどのものになるのか、またいつまで続くのか分からない状況が続きました。そういった中でお客様からのご支援、全社員のひたむきな努力と関係する皆様のご協力により、ようやく薄日が垣間見られる状況となってまいりました。
しかしながら我々は未だ上昇中であり、これから安定した巡航飛行に移らなければなりません。そのキーポイントが、今後迎えます上場だと私は認識しております。その後、巡航飛行に入りましても、様々な障害が待ち受けていることを想像しておりますが、我々の目的は安全に、快適に、そして定時にお客様を目的地にお送りすることにあります。
稲盛会長が常日頃おっしゃる通り、経営とはあらゆる計器をモニターし、刻々と変化する状況に神経を張り巡らせ、的確な判断をすることが大切であると改めて肝に銘じております。
その為に、私は会長からいただいた二つの宝、すなわちフィロソフィと部門別採算制度をより深化させ、多くのお客様に選んでいただける愛される航空会社とすべく、粉骨砕身努力することを自らの心に誓い、今回の社長就任を受けさせていただきました。
私の望みは、日本航空を『世界一』の航空会社にすることにあります。『世界一』とは先ほども申しましたように『世界一お客様に選んでいただける愛される会社』になるという意味でございます。
その為にも我々は、世界最高品質の商品を提供し続けなければなりません。
安全運航を基盤とし、最高のサービスをもって商品を作り上げ、信頼して選んでいただける航空会社となるべく、名誉会長となられる稲盛現会長のご指導のもと、私と大西は全社員と心を合わせ、「志は高く、目線は低く」の思いで経営を推進してまいります。
経営責任者としてはまだ未熟ではございますが、圧倒的な努力を重ねて取り組みますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
次に、2012年度上期の路線便数計画について触れさせていただきます。
まず国内線についてですが、福岡−花巻、新潟−札幌の2路線の再開の他、増便を含め需給環境に適合した路線便数を設定させていただきます。
国際線についても、需給環境に適合した路線便数という点では同様ですが、前回申しあげさせていただいた、成田−モスクワ線、成田−ニューデリー線、羽田−北京線の787-8機材での運航は3月末からを予定しております。また既に発表させていただきました成田−ボストン線は4月22日から開始をさせていただきます。成田−ボストン線以外の3路線については、787-8機材の受領日が確定次第、787-8機材としての予約の受付を開始させていただきます。
さらに成田−シンガポール線、羽田−シンガポール線、それぞれ現在週間7便を運航しておりますが、9月1日から787-8機材で運航することとし、また、2012年度下期の話題になりますが、成田−シンガポール線で週間7便を787で増便し、これによりシンガポール線週間21便全便を787で運航します。
今後も、商品力のより一層の強化、需要を厳しく吟味しつつ、的確な供給規模を迅速に張ることで収益性の向上を図り、また、お客様の利便性向上を実現させてまいりたいと思っております。