JAPAN AIRLINES



航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第44回
[Q] [飛行機はどのように停止するのか?]
[A]  「ドッスン」という音とともにランディング(着陸)した飛行機は、次の瞬間ゴウ音をたててスピードを緩めていきます。

 飛行機は着陸の際、エンジンに装着されているリバース・スラスト・システム(逆噴射装置)、主翼に付いているスポイラー(制動板)、そしてタイヤに付いているブレーキシステムの三つを使用して、着陸直前に時速約200キロある飛行速度を、時速10キロまで一気に減速します。今回はこれらの中から、あまり目に触れることのないブレーキシステムの話をしましょう。

 飛行機のブレーキは、胴体にあるタイヤと、主翼の下にあるタイヤのすべてに取り付けられています。しかし、タイヤの中心部分にあり、全体が隠れているため、外側から見ることはできません。

 内部の構造を簡単に説明しましょう。タイヤの中心部には円盤が10数枚並んでいて、これらはタイヤと一緒に回転するものと、回転せず固定されているものが交互に並んでいます。操縦席でブレーキペダルを踏むと、油圧の力で一番外側からシリンダーがギュッと円盤全体を押し付け、円盤の回転速度が抑えられてブレーキがかかります。

 ブレーキの構造は、皆さんが日常使用する乗用車やバイクのディスクブレーキとは違っており、しかも時速約200キロ、重さ約250トンの飛行機を止めるわけですから、着陸直後のブレーキは約400℃もの高温になってしまいます。1日に離発着が何度も行われる国内線では、ブレーキの使用回数が増え、温度が下がりにくくなる可能性があります。温度が高いとブレーキの性能が落ちてきますし、その熱でタイヤが破裂する危険も出てきます。そのため、ブレーキ・クーリング・ファンと呼ばれる送・排風機を装着して、冷却する機材もあります。

 近年、自動車に取り付けられているABS(アンチロック・ブレーキ・システム)も、車に装備される前から飛行機には搭載されていました。着陸と同時に時速約200キロで回転し、ブレーキをかけられたままだと、タイヤは消しゴムのようにあっという間に磨り減ってしまいます。こうした危険を防ぐために、タイヤがスキッド(回転が止まる)を起こすとブレーキを緩め、タイヤが回転するとまたブレーキをかける、といった装置が搭載されています。これはアンチ・スキッド・システムと呼ばれています。

 空港で見かける飛行機のランディングシーン。タイヤから小さな煙を上げて着陸する姿には、ブレーキの役割が欠かせないのです。

 
イメージ
Illustration by Chikara Kunitomo


日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載