コックピット日記

「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。

Captain86  飛行機の門限文=三輪邦雄(日本航空機長)

 新学期が始まっておよそ1カ月。皆さんの中には、子供の帰りが遅くならないよう門限を定めている方も多いと思います。
 飛行機はお客さまや貨物を乗せて、24時間、世界中を飛んでいますが、空港によっては離発着できない、いってみれば家に出入りできない時間帯を設けているところが数多くあります。
 例えば、大阪国際空港(伊丹)。ここでは「運用時間」が午前7時から午後9時と決められていて、それ以外の時間帯には離着陸ができません。分かりやすくいうと、お店の営業時間のようなもので、多くの地方空港においても同様に、運用時間が決められています。
 一方で、海上にある関西国際空港や中部国際空港、東京国際空港(羽田)、那覇空港など、基本的に24時間、離発着が可能な空港もあります。これらの空港では、騒音対策などで、進入・出発経路の制限や離発着数の制限があるものの、深夜や早朝の空いている時間帯を利用して、貨物便を運航したりしています。
 さらに、24時間、運用されているものの、滑走路の「利用時間」が制限されている空港があります。これに当てはまるのが成田国際空港で、午後11時から午前6時までは滑走路を利用できません。急病人の発生や、天候の悪化などで、緊急を要する場合には利用時間外でも離着陸できますが、それ以外は滑走路を使用できる時間が制限されています。たとえるなら、夜間の救急窓口を設けている病院のような感じです。
 このような空港の利用時間の制限を、空の世界では「カーフュー(CURFEW)」と呼んでいます。
 運用時間と利用時間、いずれの場合も離着陸の時間制限は、飛行機にとって「門限」のようなものです。ほとんどの定期便では、門限によって運航に支障がでないようにスケジュールが組まれていますが、中には担当するたびに気をつかうフライトがあります。例えば羽田から伊丹へ向かう最終便。空港が大阪市内に近いこともあり、いつも多くのお客さまにご利用いただいている便ですが、到着予定は20時35分で、門限まで25分しかありません。それにもかかわらず、気象状況や羽田空港の混雑などによって、時々、出発が遅れることもあります。
 門限に間に合わない─。そんな時は私たちパイロットのみならず、客室乗務員、整備士、地上作業員、清掃員、地上スタッフなどが総出で準備を行い、お客さまが確実に目的地へ到着できるよう努力しています。

日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)