コックピット日記

「コックピット日記」は5人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。

Captain 160 羽田・ニューヨーク線文=椎名 拓 (ボーイング 777 機長)


 読者の皆さま、こんにちは。JALは、4月からボーイング777で羽田・ニューヨーク線の運航を開始しました。新規路線に就航するということは、多くの場合、これまでに飛行経験のない空域や空港に乗り入れるため、私たちパイロットは、想定されるさまざまな事象に対し、準備を念入りにして臨んでいます。今回は羽田・ニューヨーク線についてお話しします。
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まずは、飛行ルートです。フライト前、パイロットは、ディスパッチャー(運航管理者)が気象情報、航空情報、機体重量などを考慮して作成したフライトプランをベースに、最新の情報を加味し、飛行ルート、高度、燃料を決定しています。

 皆さまの中には、ご搭乗の際に、機内モニターで出発地と目的地が弧を描いたように結ばれている地図をご覧になったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは「大圏航路」と呼ばれます。地図上を直線で結んだルートが最短距離だとイメージしてしまいがちですが、実は、球体上の2点間を結ぶ最短距離は、この大圏航路なのです。それを念頭にパイロットは、安全性はもちろん、定時性、快適性、そして運航効率を考慮した飛行ルートを決定します。

 日本の上空には、偏西風と呼ばれる、西から東へ強い風が吹いています。羽田からニューヨークに向かう場合は、追い風を利用できる有利な中緯度航路を選択します。一方で、ニューヨークから羽田に向かう場合は、向かい風の影響がより少ない高緯度航路を選択するため、同じ地点を結んでいても、季節によっては飛行時間が1時間ほど長くなるのです。 更に、羽田・ニューヨーク線では、羽田空港で利用する滑走路にも特徴があります。羽田空港には、A〜Dの4つの滑走路があり、風向きによって使い分けられています。騒音対策として、原則、北風運用時に離陸する際は、方面別の指定もありますが、主にD滑走路(ランウェイ05)を使用します。D滑走路は、海の上に建設されているため、連絡誘導路の橋を渡らなければなりません。しかし、ニューヨーク線はご搭乗のお客さまが多く、燃料もたくさん積まれているため、機体重量が橋の重量制限を超えてしまいます。よって、ニューヨーク線、ロンドン線などの指定便に限っては、C滑走路(ランウェイ34R)での離陸が許可されているのです。

 新規路線の就航は、国や都市を結ぶだけでなく、人と人を結ぶ新たな出会いや発見の始まりでもあります。皆さまの想いを乗せて、より安全で快適な空の旅をご案内します。

日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)