


客室乗務員 常川忍(以下 常):樹木医というお仕事に私達はあまりなじみがないのですが、まず樹木医になったきっかけと、主なお仕事内容を教えてください。
樹木医 小林勝さん(以下 小):樹木医の制度は平成3年にできまして、私が樹木医になったのは平成4年です。もともと「みどりの相談所」という行政サービスで木や花の相談を受けたり、弘前公園内にある植物園の植物管理を担当していまして。まあ樹木医制度ができた時に、せっかくなら資格があった方がよいのかなということで資格を取ったんです。
常:樹木医の方は、全国でどのくらいいらっしゃるんですか?
小:全国で2000人ぐらいですね。青森県内では20人ちょっとかな?
常:やはり役所の公園緑地課の方や、園芸をされている方などが多いんですか?
小::そうですね。ちなみに、樹木医は林野庁の資格なんですよ。ですから林業に携わっている方や、林業試験場の方がもともとは多かったですね。最近は民間の造園業の方も増えましたけれど。
常:では全国で2000人いらっしゃるという樹木医の方の大半は、地域の自治体などに勤めていらっしゃるんでしょうか。
小:どうでしょうね。詳しく調べたことはないのですが、造園業の方が多いんじゃないかなあ。今は行政の仕事を請け負う際に、樹木医がいないと受注できない場合もありますからね。
常:では樹木医の方の数は、年々増える傾向にあるわけですね。
小:そうですね、そう思いますよ。
常:ここ弘前公園は桜の名所として大変有名ですが、樹木医としてこれだけの桜に触れる中で、桜に対しての想いは何かありますか?
小:まあ弘前公園の桜は、弘前市の観光のメインにもなっていますから、そういったものを扱う責任感はありますよね。桜祭りの季節には、全国から約200万人のお客さまがいらっしゃいますし。弘前は、市の花も桜なんですよ。

常:多くの方が弘前の桜を楽しみにしているでしょうね。開花に向けて、冬の間はこの雪の中、どのような作業をされるのですか?
小:じつはちょうど今週から桜の剪定作業を始めたんですが、今年は意外に雪が多くて、剪定がちょっと遅れていまして。「雪片づけ」という除雪作業を先にちょっとやっていますね。
常:桜の根のまわりの除雪ですか?
小:ええ、まあ桜だけじゃなく、いろんな低木類を雪囲いしていますので、これを3月中に取らないと桜祭りの準備ができないんです。まあ桜の剪定は雪に隠れていない部分を切りますので、いいんですけど。3月中にはすべての作業を終える予定なんですが、今年は雪が多いから4月にかかってしまうかもしれませんね。

常:これまで、さまざまな種類の木を診ていらっしゃると思いますが、樹木医として桜の管理で特に気を遣われる点はありますか?
小::まあよく言われることですが、桜は非常に病気にかかりやすいんですね。枝の切り方ひとつにしても、病気にかかりにくい切り方もありますし、実際に病気にかかった桜は、いかに治療して新しい枝を伸ばしてあげるかということも重要です。他の木は、そこまで気を遣うことは少ないんですけどね。
常:桜の木は特に繊細なわけですね。
小:そうですね。ただ、桜は手入れをすればそれだけ応えてくれます。今まで他の桜の名所の話を聞きますとね、桜を植えっぱなしで手入れしていないところが多いんですよ。弘前公園の場合は、50年以上前からいろんな手入れを続けていますので、そのぶん長生きしていると思いますよ。
常:弘前公園の桜の平均樹齢はどのぐらいなんですか。
小:一般的な平均樹齢は70〜80年だと思いますけれど。ここで一番多いものは60年ぐらいのものですね。もっと古いものだと100年を越えているものが300本以上、あと2〜3年で100年になるものが100本ぐらいあります。
常:それは、普段からきめ細かい手入れをされているということですよね。
小:ええ、そうですね。
常:ちなみに、弘前公園には全部で何本の桜があるんですか?
小:ソメイヨシノだけで約1750本、他の桜も入れると2600本ほどですね。
常:ソメイヨシノ以外には何種類の桜が?
小:全部で52種類。他にも種類はありますけれど、本数は少ないです。
常:弘前の桜は50年以上前から手入れされているとのお話でしたけれど、全国から「弘前に学べ」のように、桜の指導を求める問い合わせなどはあるんですか?
小:結構来ていますね。一番遠いところは鹿児島かな。鹿児島県の南九州市です。
常:やはり桜の名所をきちっと整備したいという……
小:まあ南九州市でも桜を植えていたんですが、調子がよくないということで。その時はメールのやり取りだけでしたけれどね。あとは樹木医どうしのつながりで、大分県の日田市、広島県の桜の名所、尾道の千光寺公園も。向こうは夏が暑すぎるというのもあると思うんですよね。特にソメイヨシノに関しては、関東以北の方が気候的には合っていると思います。もともと東京でできた桜ですし。す。

常:小林さんが個人的に選ぶ弘前のおすすめポイントは何ですか?
小:やはり、お城と桜ははずせないでしょうね。あとは松……桜ほど有名じゃないですけどね、園内の松も結構いいんですよ。ですからお城と桜と松。この3本セットかな。あと城のお堀の水面に写る桜ですね。これがやっぱりメインでしょうね。
常:春は何と言っても桜ですよね。あとは秋にお伺いしても……
小:秋は桜自体も紅葉しますし、あとはカエデが1100本ほどあります。今までは桜に比べると、弘前の紅葉はさほどメジャーではなかったんですが、最近は力を入れていましてね。昨年か一昨年あたりから、モミジやカエデもライトアップしています。
常:これだけ本数があると、紅葉もまたきれいでしょうね。
小:さすがにきれいですよ。山の方に行くと八甲田山あたりが有名ですけれど、こういった市街地で紅葉が見られる場所は意外と少ないんですよね。あと夏はですね、ここ弘前も最近は夏も結構暑いのですが、弘前公園の中に入るとヒヤッとするぐらいの気温差があって……
常:森林浴をする感じですね。
小::そうですね。緑はもう、とにかくあふれていますから(笑)。
常:春夏秋冬でいろいろな表情があるんですね。しかし冬は、これだけ雪が積もると、昨年末に雪の重みで倒れた木があったと伺いましたが。
小:ええ、12月に桜が3本ぐらいと、1月にも1本倒れました。松も10本ほど倒れてます。松は1本だけ再生させましたけれど……あ、まだやってないのかな。まだ寝かせたままですね。桜は1本、ちょっともったいない木があって、再生させるように一応立て直してはあります。

常:やはり一度倒れてしまうと、再生は難しいんですか?
小:まあ若い木だとそんなに難しくないんですが、樹齢100年ぐらいの木でしたからね。
常:樹齢100年だと、相当太くて大きい木という印象がありますね。
小:かなり太いです。倒れたということは根が切れてしまったということなので、春に向けて本格的な手入れというか、治療をしてなんとか再生させたいところです。
常:これだけ雪が降ると心配ですね。
小:そうですね、特に今日みたいに気温がちょっと高くなると、雪も重たくなってしまうんです。それが続くとまた倒れることもあるので、心配ではありますけれど。
常:水分に関しては、雨がいっぱい降って根が腐ってしまうようなこともあるんですか?
小:場所によってはあり得ますね。水のバランスは難しくて、冬に雪がある程度降らないと水分補給が足りなくなるということもあります。雪が降らない地域なんかは……まあそういう地域は夏に台風がきて雨が結構降るんですけれど、中国地方や瀬戸内海あたりは、夏は雨が少ないし冬も雪が降らないでしょ。そういうところは、逆に水をあげないといけませんね。
常:木を育てるうえで水は不可欠ですものね。新しい木も毎年何本か植えられているんですか?
小:いや、基本的には植えていないんです。というのが、ここ全体が史跡指定になっていまして、木を植えるのに文化庁の許可がいるんですよ。で、なかなか桜に関しては許可が出ないんです。
常:と言うことは、今、ここにある桜の70、80年の命を100年、それ以上になるように見てあげる事が、大事なお仕事になってるわけですね。
これからも、ずっと素敵な桜の花を咲かせ続けてください。本日は、ありがとうございました。

桜は樹齢100年を迎えるのは難しいと言われているそうですが、弘前公園には樹齢100年を超える桜が300本以上残っていると、嬉しそうにお話なさっていたのが印象的でした。
また、弘前公園の桜の見どころをお伺いしたところ、普通はひとつの花芽から出るつぼみは3〜4個ですが、弘前公園では4〜5個、中にはもっと多いものもあるそうで、とても豪華な枝ぶりだそうです。
取材時はまだ雪深く寒さ厳しい青森でしたが、すでに桜の開花に向け剪定作業等をなさっているとのこと。樹木医の方がたくさんの愛情を注いでいるからこそ、あれほどに人々を魅了する桜の花が咲くのだなと感じました。お話を伺っていると、桜で満開の弘前公園が目に浮かぶようでした。





「界 津軽」に滞在し、古代檜の優しいお湯に包まれ、温活セットで温泉を満喫、料理長こだわりの美味しいお食事を楽しみ、津軽の伝統芸能である三味線にも触れ……弘前城公園では雪深い中、春の訪れを待つ生命の息吹を感じ、身も心も癒される旅となりました。
青森の今年の桜の開花は、4月下旬頃だそう、弘前公園がほのかなピンク色に包まれる頃、桜を愛でる旅に、再びここ青森を訪れたいと思います。


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