


客室乗務員 小林ひとみ(以下 小):まず、日本で庭師になったきっかけは何だったのですか?
ジム・エイメンさん(以下 J):私は1991年に来日しました。アメリカの大学で日本語を勉強していまして、もっと日本語を知りたいと思ったんです。熊本で日本語を勉強しながら英語を教えて、丸3年過ごしました。それで帰国する予定だったのですが、その前に、日本の文化をもう少し経験したくなったんです。そうしたら友達の友達の友達……という感じの人に造園屋さんがいまして。親切な人で、「1ヶ月ぐらい手伝いませんか? 日本の造園も紹介しますよ」と言ってくれました。そしてこの一ヶ月間で、日本の造園は最高だなと思ったんです。
小:たとえば、造園のどんなところに惹かれたんでしょう?
J:とてもパッションがあると感じます。その頃、この先何をしようかと悩んでいたんですが、そこで日本の造園の素晴らしさを知ってしまいました。僕はもともと山登りやアウトドアが好きで、自然に近い仕事ができればいいなとは思っていたんです。
小:自然がお好きなら、造園のお仕事はぴったりに思えたのでしょうね。
J:そう。そしてその造園の師匠について一ヶ月仕事しまして、面白いことに気付きました。造園の仕事では、次の3つのものを動かしているんです。まずは体。文字通り体を使う仕事ですよね。そして頭。庭のデザインと設計を考えながら作っていますから。そして、最後はやっぱり心ですよね。この3つとも使うから、とても面白い仕事です。そして、いくら勉強してもキリがない世界ですね。
小:まだまだ知らないことが山ほどあると。
J:まだまだですよ。造園は、木を植えたり立石をセットするのはもちろんですが、本当にいろいろなことをしなくてはいけません。石垣や石組みを作ったり、庭園内に道を作ったり、塀、池、それらの水の引き方。本当にいろいろな勉強が必要です。だからとても面白いんですね。そして、日本の庭園は本当に美しい。
小:日本の自然と美しさに興味を惹かれて、この世界に飛び込まれたんですね。
J:そうですね。

小:今はガーデニアとして、こちらでどんなお仕事をされていますか?
J:私はもともと、個人の家の庭作りや剪定をやっていたんですが、あるお客さんの紹介で、会社の玄関や坪庭を整える仕事がありまして。さらにそこの社長さんの紹介で、ここ「界 阿蘇」の庭を手掛けたんです。「界 阿蘇」のオーナーさんがもつ庭のイメージは、自然にあまり手を加えず、そのままの感じで。自然を守るためですよね。オーナーさんには、「大きな業者だと、木を一本ずつ大事にすることができないかもしれないから、ジムに頼む」と言われました。
小:今のジムさんは、日本の桜をどのように感じますか?
J:最初に桜のイメージを体感したのは、大学の日本文学のクラスでした。短歌と和歌を勉強して……あとはやっぱり映画ですよね。クロサワの。それが最初のイメージでした。日本に来てからは、大勢の日本人が桜の下でピクニックするのを見たりして、だから悲しみと喜びの両方がありますよね。人生のシンボリズムだと思います。すぐ散って終わるのも、人生にぴったりじゃないですか。

小:桜といえば、はかないイメージがありますからね。
J:そう。ただ、私は梅の方が気になるかなあ。
小:梅は控えめで美しいですよね。
J:そうですよね。
小:私もそう思います。では日本のお庭や草花に対してはどう思われますか?
J:日本の花は、そうですね、色々ありますけれど、まず小さな花。水仙とか、小さな花々がとっても可愛いと思います。あとは椿。僕は、花では椿が一番好きかなと思っています。すごくバラに似てるでしょ、でも棘がないし。葉っぱもディープグリーンでね、それがものすごく好きですね。お客さんの庭に木を植える時には、花だけじゃなくて庭全体を見ましょうと言っています。あと、選ぶ時には虫のつき具合も大事です。
小:たしかに、虫を気にする方もいるでしょうね。
J:毛虫がつきやすい花だったら、違う花にした方がいいですよ、などは言いますけどね。私は消毒をほとんどしないんですよ。剪定をきれいにしたら、虫は結構つきにくいんです。あとは虫が出やすい時期もあるんですよね。年に2回、虫が卵を産む時期に見つけて取っておけばいい。あと、あまり知られていませんが、葉っぱの裏に最初につく毛虫は小さいので、その1匹を早めに見つければ、それで100匹……
小:100匹の毛虫を防ぐことができる。
J:できるんですよ。そのへんのことをケアすれば、消毒はいつもしなくていいんですよ。違うテクニックがありますからね。
小:そのぶん、虫のことをよく知っておく必要がありますね(笑)。ところで、日本にはいくつか有名な庭園がありますが、ジムさんが気になる場所はありますか?
J:そうですね、私は京都には3回行きまして、龍安寺や金閣寺、清水寺、有名なところしか行っていませんが、清水寺が一番きれいだと思いましたね。しかし九州だったら、鹿児島はきれいです。知覧という場所があって、昔のサムライの村なんですね。数寄屋造りの家が残ったりしていて、ものすごく、私の言葉では言えないぐらいのすごさ……。あれはね、ヴェリー・ヴェリー・パワフル・エクスペリエンスですよ。あと九州には、小さくてもおしゃれな庭がたくさんあるんです。

小:いわゆる有名な庭園以外にも、いろいろありますよね。
J:そうです、そうです。だから、有名な場所も行ってほしいけれど、自分が住んでいる町でも、小さくてもきれいな庭を見つけられるんです。僕も、まだまだ探しに行きたいですよ。有名な庭園は、時々「有名すぎる」という問題もありますしね。
小:人気があるぶん、いつも人がいっぱい来て混んでしまうとか。
J:そう。だからちっちゃな場所で、静かな時間を見つければいいんですよ。穏やかで気持ちよくなれますよ。皆さん、大きくて有名な場所に何となく行ってしまうから、その体験をするのが難しいですよね。
小:小さくて素敵な庭を、自分で見つける楽しみを持ちたいですね。
小:ジムさんは、庭師のお仕事を通じて、今の日本人の庭に対する意識をどのように感じていますか?
J:今の日本の建築を見ると、庭のスペースが少なくなっているんですよね。極端なのは、庭がまったくないとか。それはやっぱり悲しいですよね。私は、日本の建築と庭がセットになった、美しいスタイルなので好きなんですよ。数寄屋造りの建築と庭のバランスとか。建物と別々でも確かにきれいですけど、ワンセットになるとすごくいい。
今、日本庭園は「面倒くさい」とか「手がかかる」「お金がかかる」と思われていますね。でも、日本の庭園ってじつはヴェリー・ヴェリー・フレキシブルでしょ。坪庭なんか、畳一、二枚のスペースに木を植えて苔も敷いて、それでもう立派な日本庭園ですよ。

小:なるほど、たしかに小さな庭でも愛情をもてば楽しめますよね!
J:そう、木をいっぱい植えるよりお金もかからないし、逆に一本だけ植えて大事にしてもらいたい。たとえ小さな庭でも、それがあると人生が絶対よくなると思うんですよ。だから、「高い、手がかかる」というイメージとは反対の庭もあるということを知ってほしいですね。庭は愛ですから、いっぱい愛をかけたら美しくなるんですよ。あとは掃除ですね。
小:庭師としての愛情にあふれているジムさんですが、今後目指していきたいことはありますか?
J:そうですね、仕事面では、やはりもっといい庭師になりたいですよね。勉強のチャンスを見つけて、レベルアップして。自然と庭と人間のコネクションをもっと紹介していきたいです。たとえば石でも木でも、美しいポイントを見つけて鑑賞できるのは、自然と人間のコネクションがあるからですよ。でも人間と自然があまり離れすぎてしまうと、自然が他人みたいになっちゃうんですよね。個人的には、もっと山に登ったり、家内とも旅行に行きたいですね。家内は「界 阿蘇」みたいな場所が大好きなんです。
小:この先もずっと日本で生活して勉強して、とお考えですか?
J:そうですね、3年前に日本の永住権を取りましたので。もう死ぬまで日本で頑張りたいと思っています。
小:それは嬉しいですね。今日は本当にありがとうございました。
J:こちらこそ、ありがとうございます。



いつも上空から眺める勇ましい阿蘇山、「火の国」と称されるこの地に降り立ったとき、凛とした清々しい空気に包まれました。迫力ある山々の中に湧き出る豊富な水資源、すべての源である水が豊かであるからこそ、雄大な大自然が守られているのでしょう。
自然との共存について深く考えなければならない、今の日本に生きる私たち。フライトの時に空から見る自然はいつも美しく、心を満たしてくれます。この豊かな環境を守っていきたい、と改めて強く感じました。そのため航空会社でも、環境保全のため、温暖化対策など様々な取り組みを行っています。
神聖な空気に触れ、日本人として大切な「和」への気づきを多く与えてくれた、大自然と共生する阿蘇でのひとときでした。


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