2010年11月30日、定例記者会見を実施いたしました。
会見での管財人・社長のメッセージを掲載させていただきます。
日本航空 法人管財人職務執行者
企業再生支援機構 再生支援委員会 委員長
瀬戸 英雄
最初に、管財人を代表してご挨拶申し上げます。
本日午後3時、東京地方裁判所から日本航空の更生計画の認可決定をいただきました。
8月31日に提出した、更生計画案については、9月10日から今月19日まで、更生計画案に対する債権者の賛否を問う書面投票が行われました。
その結果は、更生担保権の組では、日本航空及び日本航空インターナショナルは100%、JALキャピタルは96.56%の賛成、一般更生債権の組では、日本航空96.43%、日本航空インターナショナル96.79%、JALキャピタルで99.29%という、いずれも96%以上の賛成を頂戴しました。多大なご迷惑をお掛けしたにもかかわらず、必要数を大幅に超える賛成をいただいた債権者の皆様に改めて感謝申し上げます。
この投票結果を受け、本日、東京地方裁判所は、日本航空の更生計画の認可を決定しました。
続いて、リファイナンスに向けた金融機関との協議の状況についてお知らせします。
本日、日本政策投資銀行、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、国際協力銀行とリファイナンスに関する基本合意が成立しました。
細かな融資条件については、引き続き協議の必要があるため、詳細は控えさせていただきますが、これによって、リファイナンス資金を原資とした更生債権及び更生担保権の一括繰上げ早期弁済を来春実施する下準備が整いました。その上で、日本航空の会社更生手続は、来年3月を目途に終結させる所存です。
今後の手続について、ご説明いたします。
裁判所の認可を受けた更生計画の定めに従って、日本航空・日本航空インターナショナル・ジャルキャピタル(更生三社)は、存続会社を日本航空インターナショナルとして合併します。その上で、ジャルウェイズ、ジャルリーブルの2社を統合します。存続する会社は当面、日本航空インターナショナルということになります。
資本については、これまでの資本及び資本準備金は、いわゆる100%減資されますが、企業再生支援機構が3500億円を出資します。
その上で、日本政策投資銀行及び企業再生支援機構から借り入れていた緊急融資・DIPファイナンスの残額1800億円を返済します。これをもって、昨年秋の危機時期以降に実行された緊急融資は、元利金ともすべて返済したことになります。この弁済をしても、当面の資金に問題ありません。
なお、存続会社である日本航空インターナショナルは、来年4月1日、日本航空株式会社に社名変更します。
次は、組織改正と部門別採算制度の導入についてです。
先にご案内しましたとおり、12月15日付けで「部門別採算制度」をベースとした組織改正を行ないます。併せて、この制度を担う経営陣も選抜しました。
この新しい制度の本格導入によって、環境の変化に俊敏に対応し、迅速な意思決定が行える経営システムを構築します。若干の助走期間を必要としますが、来年度には部門別採算経営を本格的に始動させます。これによって、組織の隅々まで神経が行き渡った機動的な経営が実現できると期待しております。
ところで、この機会に、日本航空の管財人として、また公的支援を付託された機構として、航空産業の「競争環境の基盤整備」に関連して,航空機燃料税の問題に若干触れさせていただきます。
管財人として、6月14日に「航空機燃料税及び空港使用料の減免等を要望する書面」を関係大臣に提出し、また11月18日には「税負担の軽減に関する要望」を提出しました。
航空機燃料税については,現在税制改正の議論が進められているところです。航燃税は、国内線に限って課税されるもので、空港整備等の財源を目的として航空会社に課税されておりますが、世界にまれな税制であり、わが国の航空会社の経済基盤を弱める要因となっております。
かつては、保護政策の下で担税力もあった航空会社に課税し、その財源をもって空港建設とその整備に利用したものでしょうが、規制緩和によって内際の競争が激化し、オープンスカイを進める環境においては、経営難にある本邦航空会社をただ鞭打つものであり、その国際競争力を削ぐ結果としかなりえません。誰もがありえないと思っていた日本航空の破綻が現実のものとなったこの機会に、かような税制を根本から見直していただきたいものです。
日本航空は、債権者のご理解によって、更生計画によるバランスシート調整と組織変更を実現できました。しかし、如何に徹底した自助努力をしようとも、過酷な公租公課がそのままでは、年々激化する競争環境の中で生き抜く力を蓄えようもありません。
まずは、航空機燃料税の減免を速やかに実施していただきたいものです。
1月19日の会社更生手続開始から今日まで、大多数の社員は、日本航空の再建を信じ、各職場において、不撓不屈の一心でひたすら頑張っております。多くのハンディを背負いながらも、この半期の業績向上は、目を見張るものがあります。もとより、急速な財務改善は、ビジネス旅客の回復、更生手続の効果としての減価償却費の負担軽減、燃油価格の安定や円高もありますが、現場のサービス向上に真摯に取り組み、併せて徹底したコスト削減を実施するなど、地道な社員一人一人の努力の効果が大きく寄与しております。思い半ばにして、職場を同僚・後輩に託し去っていったOB・OGを含め、社員の皆さんの日本航空再建に賭ける強い思いの成果であろうと思います。
まだまだ不十分という批判もあろうかと思いますが、JALは、この春を契機に見違えるように変わったと多くの利用客の皆様から高い評価を頂戴しております。小さなことの積み重ねが、債権者を始めとする多くの関係者の皆様のJAL再生へのご理解を深めることに繋がったと思います。
本日の更生計画認可によって、新しい日本航空を創造する基盤が整備されました。しかし、資本のさらなる充実、財務基盤の強化、金融機関との新しい関係の構築、経営人材の育成、労使関係等々、まだまだ課題は山積しております。
引き続き間断なき業務改善と意識改革に取り組み、如何なる難関が立ちはだかろうがそれに怯むことなく正面から受け止め、誠実にまた着実に解決に努めてまいる所存です。
今後とも、日本航空の再建にご理解とご協力をお願い申し上げます。
私からは以上です。
日本航空 社長
大西 賢
本日はお忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
先ほど瀬戸委員長よりご挨拶させて頂いたとおり、本日、更生計画案について東京地方裁判所よりご認可をいただきました。
改めまして、現在も運航を継続することができていること、また、再生のチャンスをいただいたことに感謝申し上げます。また、債権者の皆さま、株主の皆さまに多大なご迷惑をおかけしたことに心よりお詫び申し上げます。
JALグループは、本日東京地方裁判所よりご認可いただいた更生計画を着実に実行することで早期再生を果たしてまいります。引き続き安全運航を堅持しながら、今後のイベントリスクや競争激化の環境の中でも安定的に運営し、さらには、持続的に成長していける筋肉質な体制を構築してまいります。そして日本や世界の空で皆さまに選ばれ、お役に立ち続けることができる航空会社に生まれ変わることができるよう、過去のしがらみを拭い去り、しっかりと改革を進めてまいります。
これまでも、更生計画に盛り込まれました各種社内施策について、多くのものは先行実施してまいりました。人員規模の適正化も、春先より、特別早期退職措置、その後の希望退職措置、応募期間の延長等を実施してまいりました。このような中、11月15日に発表しました整理解雇による人員規模の適正化の決断については、現状も、変化はありませんが、今後とも一人でも多く希望退職を募っていく所存でございます。
整理解雇という決断に対しては、共にJALを支えてきた者として私も耐えがたい痛みを感じております。しかしながら今回ご認可いただいた更生計画は100%減資、多額の債務免除、企業再生支援機構からの出資など多数の皆さまに多大なご迷惑をおかけし、また、お客さま、お取引先を含め、多くの方々に大きなご心配をおかけした経緯を踏まえると、事業規模に応じた人員体制を早急に構築することは、更生計画を成し遂げるための大きな要素であると認識しております。「このようなことを二度と繰り返してはならない」という固い決意と、「何があっても再生を果たす」という強い覚悟のもと、経営にあたっていく所存です。
一部の労働組合がこの整理解雇の決断を不服として争議権投票を行い、スト権を確立しております。今後とも、真摯に、誠実に協議を行って参りますとともに、便の欠航等お客さまにご迷惑がかからぬよう万全の対応をとってまいります。
続いて10月次の経営状況について触れさせていただきます。日本航空インターナショナル単体ベースにおける財産評定後の営業利益の概算値は、178億円の営業黒字になりました。10月度については運休や減便などにより事業規模の縮小が進み、売上げは前年対比で減少するものの、費用削減の着実な実施により黒字を確保致しました。また、グループ連結においては、231億円程度の営業利益を確保する見通しです。
引き続き、基本品質の向上と営業努力に努め、また、徹底した費用削減に取り組みながら、月次の営業利益確保にも全力を尽くしてまいります。
最後になりますが、改めて、更生計画についてご理解いただき、ご認可いただいたことを感謝申し上げます。
JALは安全運航を堅持し、自己改革と徹底した自助努力を行い、この更生計画を着実に実行してまいります。必ず生まれ変わります。
私からは以上です。ありがとうございました。