最新鋭のボーイング747-400型機が導入された1990年当時、私は調達部航空機グループという購入契約や導入の準備を行う部署にて、空港の現場から来て間もない若手として一生懸命走りまわっていました。
通称「ダッシュ400」と呼ぶこの機体は、最新鋭の技術が搭載され、それまでのクラッシックジャンボに比べて約2割も燃費効率が良いため、世界の主要エアラインがこぞって発注していました。
その中でも日本航空は、英国航空やシンガポール航空と並び世界最大数の発注者として、また技術的にも一番厳しい水準を求める会社として、製造元のボーイング社と導入まで熱い議論を交わしていました。
おそらく今で言えば、これから次世代を担うボーイング787型機への期待感や導入直前の高揚感・緊張感などと同じようなものだと思います。
みなさん、航空機を買うときにはどのようなことをするのかご存知でしょうか?
お店で並んでいる車を選ぶのとはかなり違い、まだ出来てもいない新型機について、航空会社のニーズをメーカーにどんどん伝えていき、一緒に開発するイメージです。
電話帳数冊分もの英文の航空機購入契約書を結び、導入までの間、運航・整備・客室・営業などのさまざま部門からの要望を踏まえた仕様変更などを契約に落とし込んでいきます。
この、英語での契約交渉には本当に苦労しました。
また、現地シアトル、ボーイング社の工場にいるJAL技術駐在員が日夜、製造過程をチェックしていきます。
半年ほどしてやっと航空機が出来上がり、ボーイング社のテストパイロットによる試験飛行がOKとなると、今度は弊社のテストパイロットを始めとした領収検査員が乗り込み、規定の性能がでるか、減圧時に酸素マスクはきちんと降りるかなど、さまざまな状況を作り出し、実際に作動するかの確認を行っていきます。
こうして機体に問題がないことが確認されると、FAA(米国連邦航空局)から輸出耐空証明が発行され、残った小さな不具合事項をいつまでにどう直すかまで詳細に詰めます。
同時に、ニューヨークの支店に準備しておいた残金、百数十億円分のドルを払い込みます。
ボーイングから「領収書」とともに「エアクラフト・キー」が渡され、引き渡し完了!
航空保険の手続きをして、晴れてJALフリートの仲間入りとなります。
受領した新しい飛行機が日本に向けて飛び立つ際、シアトルの技術駐在員の皆さんと大きく手を振って見送るのですが、こうして手を振るたびに、夜を徹して準備して無事予定どおり受領できたことに安堵するとともに、これから長い間、私たちと一緒に汗を流してくれるのかなあと思うと、心強い同僚を得たような嬉しさで胸がいっぱいになったのを覚えています。
私が初めて受領した機体「JA8073」は、2010年10月に米国の会社に売却され、第二の人生に向けて、元気よく日本を飛び立ったと聞きました。
2010年度中に44機全てのダッシュ400は退役します。
同僚のパイロットによると、操縦性能のよい非常に素直なよい飛行機とのこと。
いわば“定年”を待たずにJALを去ることになるわけですが、これまでの間、世界の空でたくさんのお客さまの夢や思い、嬉しさや悲しさを運んでくれたんだなあと思うと、
また感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。
そして、第二の人生でまた、日本に飛んできてほしいなと思います。
「久しぶりに戻ってきたよ、元気にしているよ!」と言ってくれるのを期待して。

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