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速度 speed
1. 飛行速度 flying speed
(1)最大速度 maximum speed
(2)最小速度 minimum speed
(3)最大運用限界速度 VMO:maximum operating limitation speed
2. 対気速度 airspeed
(1)指示対気速度 IAS:indicated airspeed
(2)較正対気速度 CAS:calibrated airspeed
(3)等価対気速度 EAS:equivalent airspeed
(4)真対気速度 TAS:true airspeed
3. 対地速度 ground speed
4. 音速 speed of sound, sound velocity
(1)亜音速:サブソニック subsonic speed
(2)遷音速 transonic speed
(3)超音速 supersonic speed
(4)極超音速 hypersonic speed
5. マッハ数 Mach number
(1)臨界マッハ数 critical Mach number
(2)マッハ・コーン Mach cone
(3)マッハ計 Machmeter
(4)衝撃波 shock wave
(5)ソニック・ブーム sonic boom
(6)音の障壁,サウンド・バリヤー sound barrier
1.飛行速度(flying speed)
 飛行機の運航を考えてみると,一回の飛行について,静止状態から加速し,離陸・上昇・巡航・降下・(待機)・着陸の各飛行段階を経て静止状態に戻る,という操作の繰り返しである。この間,飛行機の速度はゼロから音速の70〜90%程度の広い範囲にわたって変化するが,飛行機の速度の範囲に応じて単位を適宜使い分けている。
 たとえば,速度があまり速くない飛行機の速度の単位は,海里(nautical mile)を単位とするノット(knot)が用いられる。
 一方,飛行機の速度が音速に近づくと,音速(または空気の圧縮性)に派生して生ずる種々の飛行の障害を考慮しなければならないので,飛行機の速度と音速との関係を知る必要から速度の単位にマッハ数も使うようになる。
(1) 最大速度(maximum speed)
 水平飛行で到達できる最大の速度をいう。飛行機が水平定常飛行をするためには利用推力と必要推力(つまり飛行機の抵抗)とが釣り合っていなければならない。必要推力は,速度が増加するにつれて大きくなるので,大きい速度で水平定常飛行を行うためには,エンジンの推力(つまり利用推力)を増加させなければならない。ところが,エンジンが発揮し得る推力には限度があって,それ以上の推力を得ることはできないから,図2-1-12のように,エンジン推力と必要推力とが釣り合うときの速度が水平飛行で到達できる最大の速度ということになり,これがその状態における最大速度となる。
 なお,水平飛行における最大速度を求めるときは,最大連続推力(MCT)が用いられる。
図2-1-1 最大速度(推力と抵抗の関係)
図2-1-2 最小速度(推力と抵抗の関係)
(2) 最小速度(minimum speed)
 水平飛行ができる最小の速度をいう。速度を小さくしていくと,図2-1-12のように,抗力の増加によって必要推力は逆に増大し,最大速度の際と同様,ついには利用推力が不足するようになる。このようなとき利用推力と必要推力とが釣り合う最小の速度か,失速速度に所定の余裕を加えた速度のどちらか大きい方の速度が,水平飛行を続けることができる最小の速度で,これがその状態における最小速度となる。ただし速度が最小抗力速度(厳密には利用推力の線と必要推力の線が接する速度)より小さくなると,速度安定性が負になるため,通常はこれ以上の速度で飛行する。
(3) 最大運用限界速度(VMO:maximum operating limitation speed)
 航空機を運用するときの限界速度で,通常の運用ではこの速度を超過してはならないことが規定されている。ジェット機の場合,この速度は対気速度とマッハ数とで示される。対気速度は機体構造の保安上,マッハ数は操縦性の確保をそれぞれ目的として定められている。したがってこの速度は空気密度の大きい低高度では指示対気速度により,高高度ではマッハ数によって制限される。最大運用限界速度はVMO,最大運用限界マッハ数は,MMOと呼ばれ,パイロットが無意識にこの速度を超過しないよう速度計に表示されるとともに,音による速度超過の警報装置が設けられている。
2.対気速度(airspeed)
 航空機と大気との相対速度。対地速度と区別するために用いられる。指示対気速度(IAS),較正対気速度(CAS),等価対気速度(EAS),真対気速度(TAS)などがあり,対気速度はその総称である。
(1) 指示対気速度(IAS:indicated airspeed)
 ピトー静圧式速度計の目盛りを読みとった速度で,ピトー取り付け位置および機体姿勢の変化によって生じた速度の誤差は,修正していない値である。この速度は,対気速度計の指示に使われ,一般の飛行操作に用いられる。
(2) 較正対気速度(CAS:calibrated airspeed)
 指示対気速度(IAS)に,対気速度系統の誤差(位置誤差,計器誤差)の補正を加えて得た速度。この速度は,主として航空機に対する速度の規定(離陸および着陸速度)に用いられる。
(3) 等価対気速度(EAS:equivalent airspeed)
 特定の高度の飛行速度を海面上標準状態の速度に換算したもの。較正対気速度に,その高度および速度に対する空気の圧縮性の影響を補正した速度。飛行機の飛行高度と速度が小さい場合,圧縮性の影響は無視でき,CAS=EASとなる。また,海面上標準大気状態ではCAS=EAS=TASとなる。この速度に動圧が関連するので,機体構造の強度計算に用いられる。
(4) 真対気速度(TAS:true airspeed)
 乱れていない大気と航空機との相対速度で,EAS(等価対気速度)にその高度における空気密度比(海面高度の空気密度とその高度の空気密度の比)の修正を加えて得られる。低速機で圧縮性の影響が無視し得る場合,CAS(較正対気速度)に空気密度比の修正を加えて得られる。この速度は航法に用いられる。
3.対地速度(ground speed)
 飛行中の航空機の地表面に対する相対的な水平速度をいい,対気速度と区別して用いられる。対地速度は真対気速度に飛行経路に対する風速成分を加味して求められる。
4.音速(speed of sound, sound velocity)
 音が空気の中を伝わる速さを指す。音速は気温によって変化し,気温が高いときは速く,低いときは遅い。海面上,気温が15℃のときの音速や約340m/sec(または661ノット)である。また,気温は高度1,000mにつき6.5℃ずつ下がるので,高空に行くにしたがって音速も遅くなり,11,000m以上の成層圏では295.2m/secとなる。
 音速(a)と温度(t)の関係は,15℃を基準にすると,
a=340.3(m/sec)
となる。高速の飛行機では,速度を音速に関連させて区分し,飛行機の周りの空気の状態がどのようになっているかを表すことがある。その区分には亜音速,遷音速,超音速,極超音速の四つがある。
図2-1-3 マッハ・コーンの概念(上図)と造波抵抗(波を造って抵抗を増す)の概念(下図)
(1) 亜音速:サブソニック(subsonic speed)
 音速より小さい速さ。マッハ数0.75以下で,飛行機の周りの空気流速度はどの部分においても音速に達しない速度領域。この速度では空気はほとんど圧縮されず,いわゆる完全流体(ただし粘性はある)と考えてよい。
(2) 遷音速(transonic speed)
 音速前後のマッハ数で0.75〜1.25ぐらいの間をいい,飛行機の周りの速度は亜音速と超音速とが入り混じっている。空気が圧縮性を有する気体であることの性質が現れてきて,衝撃波の発生により飛行機の安定性や操縦性にいろいろな障害が現れ,設計者やパイロットにとって最も難しい速度領域の一つ。現在のジェット旅客機はこの速度範囲を飛行する。
(3) 超音速:スーパーソニック(supersonic speed)
 飛行機の周りの空気の速度がどの部分をとっても音速を超えているような飛行機の速さ。マッハ数1.2〜5.0。理論と実際が一致するので,遷音速のときよりも空力的な設計は楽である。しかし,飛行速度の増加とともに空気との摩擦による熱の障害が次第に大きくなり構造,材料的に難しくなってくる。
(4) 極超音速(hypersonic speed)
 通常,マッハ数で5.0以上の速度をいうが,この領域は厳密に5.0とは決められていない。物体の周囲の流れや力の状態が流体力学の理論に極めて近くなり,簡単な計算で近似値が求められる。しかし,空気との摩擦による加熱はますます激しくなり,機体の材料や周囲の空気の状態が変わってくるので,単に流体力学のみでは解決し得ない問題が多くなって,実際の飛行には難問が山積している。
5.マッハ数(Mach number)
 音速と飛行機の速度の比をいい,Mの記号で表す。飛行機の速度がその大気状態における音速の80%ならば,M=0.8となる。1887年衝撃波を初めて写真に写した,オーストリアのエルンスト・マッハ教授の名に因んで命名された速度の単位である。アメリカ発音ではマック。
(1) 臨界マッハ数(critical Mach number)
 飛行中の航空機の周囲の流れの速さは一様ではないが,その中の一番速い部分の流速が音の速度に達したときの航空機の速度をいう。この速度までは衝撃波は発生せず,この速度を超えると衝撃波が発生し,流れの状態が複雑に変化するようになる。
(2) マッハ・コーン(Mach cone)
 飛行機の速度が音速を超えると,飛行機を頂点とし後方に円錐領域ができ,音はこの中だけに伝わるようになる。この円錐をマッハコーンと呼び,円錐の半頂角をマッハ角という。マッハ数はマッハ角のサイン(sin)の逆数となり(マッハ数=1/sin(マッハ角)),たとえばマッハ数が2.0のときのマッハ角は30度になる。
(3) マッハ計(Mach meter)
 
→速度計
(4) 衝撃波(shock wave)
 航空機の速度が音速に近くなったとき,空気の圧縮によって翼の上や胴体の周囲に生ずる一種の波で,圧力の急激な上昇を伴い,飛行機の性能や安定性に種々の悪影響を与えるほか,機体から離れた衝撃波は,音速または超音速で進行し,地表面に衝突したとき,大きな音響を発生することがある。
 一般には爆発のような圧力変化が急激に伝わる現象を衝撃波といっている。(→ソニック・ブーム
(5) ソニック・ブーム(sonic boom)
 音波による爆発音。飛行機が超音速飛行をしたときに発生する衝撃波は,たとえ飛行機が速度・方向を変えても,空気中を直進して次第に消滅するが,これが地上に伝わると轟音を発して,人を驚かしたり窓ガラスを壊したりする。飛行機の重量,外形,高度,大気温度によって,地上に到達する音の強弱に違いがある。
(6) 音の障壁,サウンド・バリヤー(sound barrier)
 飛行機の速度が音速近くになると,衝撃波の発生によって,抵抗の増大,境界層の剥離など,設計・運用上のさまざまな障害(壁)に出合って,超音速飛行は不可能かと思われた時代があった(1947年ごろまで)ので,音の障壁といわれていた。

 
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