



2010年4月に新しい空港の提案として研究結果の発表が行われました。

コミュニティー&スペースチームは、空港内のベンチに着目。利用者の気持ちやベンチの持つ機能と構造について分析し、他者との物理的距離・心理的距離を考慮したデザインとすることにしました。現状の直線的なベンチではなく、弓状に湾曲したデザインなら、知り合い同士で弧の内側に座ればコミュニケーションをとりやすく、他人同士の場合は外側に座ることによってプライバシーを保てます。さらにベンチの脚部をミニマムにすることで、セキュリティ上必要な見通しの良さを確保すると同時に、空に浮かぶ雲のイメージを表現できました。安全性と快適性を兼ね備えたベンチとなっています。



インフォメーションチームは、空港内の情報やサインシステム(表示・案内)の研究内容を発表。空港実地調査での”気づき“に基づき、利用者の心理を整理。「時間」に関する不安に注目し、導き出した仮説が、空港初心者の視点でとらえた「タイムサインシステム」です。これは、携帯電話などの電子媒体を用いたり、搭乗券や電光掲示板などのサインを色分けすることによって、利用者が簡単に時間情報を得られるシステム。必要な情報を時系列に提供されることによって、安心して自分なりの時間を過ごせることになります。

モビリティチームは、空港内で利用者が荷物を運ぶ小カートを研究対象としました。キーワードは、カートを使用している際の「美しい姿」。利用者の使いやすさに加えて、美しいものは操作しやすく見えるという「美的ユーザビリティ効果」という考え方を取り入れ、「デザイン性の高さ」にもこだわりました。ブレーキ機能が付いた安全な車輪、両手を使わなくても操作でき、手を休められる球体を付けたハンドル、そして荷物の出し入れのしやすさ、使用しない時はコンパクトに収納できる機能などさまざまな課題を解決しました。

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空港という空間は、ベンチやカート、各種の表示・案内をはじめ、多くの要素で構成されていました。実地調査や研究を重ねるうち、「利用者はさまざまなデザインの要素が混在すると、混乱し不安になるのではないか」と考えました。その結果、「チーム単体で設定した対象を研究するのではなく、情報を共有しながら、空港全体のユニバーサルデザインという一つの目標に向かうべき」だと気づいたのです。それ以降は、3チームそれぞれの情報と意見を交換しながら研究を続けました。このプロジェクトを通して、「ユニバーサルデザインとは、人に対する心遣い」だということも実感しました。

2011年6月に五感から発想した椅子のデザインと空港サービス調査の研究発表が行われました。
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2011年、JALと東京大学が取り組んだ研究テーマは「Sensing Wear〜五感に訴えるデザイン」。視覚、嗅覚、味覚などの五感を切り口に、お客さまに「心地よさ」を感じていただくデザインに挑戦する実験的な企画です。学生の皆さんによる斬新なアイディアを、JAL担当者の意見を取り入れながらブラッシュアップ。設計から製作加工まで約半年間かけて取り組み、最終的に5脚の椅子を完成させました。

そして手作りの椅子を、今年5月にニューヨークで開催された国際現代家具見本市(ICFF)へ出展。“共同プロジェクト”の成果を国際舞台の場で多くの方々に体感していただき、海を越えておもてなしの精神を共有できました。その後、作品はジョン・F・ケネディ国際空港や羽田空港のJALラウンジにも展示され、「発想が面白い」「ずっと座っていたい」などの評価をいただきました。

国際現代家具見本市(ICFF)へ出展

ジョン・F・ケネディ空港のJALラウンジに展示されました。

羽田空港のJAL国内線ラウンジに展示されました。
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学生のみなさんは国内4空港で実地調査し、お客さまの行動パターンや、期待や不安などの心理変化を分析すると共に、課題やニーズを明らかにした上で提案がなされました。その提案は多岐にわたり、プロダクトデザインから、新サービスまで若者の柔軟なアイディアが盛り込まれた斬新なものばかりでした。「感性を研ぎ澄ますことで、普段は見逃してしまうような違和感や気づきの中に、快適性を向上させる新たな発想やアイディアを見つけだすことができた」と成果が発表されました。これらの発表内容は今後のJALにおけるさまざまな挑戦への布石となる貴重な財産となりました。
各研究テーマにおける成果や提案を発表
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日本文化の「鎧」をモチーフに
東京大学 工学部建築学科
蒔苗 寒太郎さん

武士の鎧をヒントに、日本文化を表現できるデザインを目指しました。背板は細い板をヒモで結んで作り、身体にフィットするよう工夫。固い素材を使いつつ座り心地が柔らかい、というギャップが楽しめます。ICFFの会場では、外国の方々の反応によい刺激を受けました。この鎧の構造を、今後は建築物などに応用したいです。
斬新なモチーフの2WAYチェア
東京大学大学院工学系研究科 機械工学専攻
暮橋 昌宏さん

「味覚」をテーマにするために、顎のように開閉する構造を取り入れました。2つのパーツを重ねたキューブ型で、パーツを並行に組み替えると「舌」を思わせるなだらかなカーブを描く寝椅子に変身します。背中を伸ばせる心地よさにこだわり、椅子の角を削ったり表面を滑らかに整えることで、安全性にも配慮しました。
光を利用したユニークな発想
東京大学大学院工学系研究科 機械工学専攻
横尾 俊輔さん

人が家具に触って何かを感じるのではなく、「家具が人を感じて、何らかの反応をする」という逆転の発想に挑戦しました。この椅子に座ると、その重みで圧力センサーが働き160個のLEDライトが光ります。「人が座っている」ことを、座っている本人や周囲に光によって伝え、光による心地よい空間演出を目指しました。
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「五感をフルに使って心地よさを演出する」という学生の皆さんの視点や発想は、さらなるおもてなしへの気づきとなりました。その気づきを次世代の機内座席や機用品の開発に生かしていきます。
日本人と日本文化が大切に育ててきたおもてなしの心に新しい息吹を加え、「日本のこころ」を体現していく “新生JAL”。JALグループはお客さまの感性に響くおもてなし、「心のユニバーサルデザイン」をこれからも追求してまいります。ぜひ、ご期待ください。
感性とデザインの未来について語り合う先生、学生の皆さんとJAL担当者


今回の共同プロジェクトに参加した東京大学の学生は、学部の枠を超えて集まった有志たちです。プロジェクトを問題解決型だけではない「提案型」の取組みや、既成の要素から新たなアイディアを生む発想など、学生たちは貴重な経験を得ることができました。若者たちのリアルな意見や斬新な視点は、“新生JAL”にとっても革新的な一歩につながるはずだと感じています。次世代のJALと今後の東大の展開にとって、非常に価値ある産学共同プロジェクトの機会を与えていただいたことに感謝しています。企業と学生が共に成長できるような今後の活動に期待しています。
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