JAPAN AIRLINES



航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第58回
[Q] [飛行機はなぜ、左側から乗るの?]
[A]  左団扇、左党、右に出る者がない、座右の銘など、左右にまつわる言葉には歴史や習慣が見え隠れします。そういえば、飛行機の乗り降りには、ほとんど機体の左側にあるドアが使われます。これも何か理由があるのでしょうか?
 ここで少し、船の話をしたいと思います。船は、船首に向かって右側、つまり右舷を「スターボード・サイド(STARBOARD SIDE)」、左舷を「ポート・サイド(PORT SIDE)」と呼んでいます。その昔、大勢の人を乗せたり、荷物を運ぶのは船の役割でした。そして、古い時代の船は、右舷の船尾に取り付けられた舵板(STEERING BOARD)で、コントロールする仕組みになっていました。(ちなみに、この言葉が後に、「STARBOARD」に変化しました)
 船が港に到着するときを考えて見てください。右舷には舵板があるため、船を岸につけるのに邪魔になってしまいます。そのため、船は左舷から接岸して、人の乗り降りや荷物の積み卸しをするのが慣習となりました。それで、左舷を「ポート・サイド(港側)」と呼ぶのです。
 そんな船から、飛行機へと時代は移り変わり、今でも飛行機には船に倣った用語がたくさん残っています。たとえば、私たちは飛行機のことを「シップ」と呼びます。機材繰りなどで使用機材が変更されることを「シップ・チェンジが発生した」と言います。客室を「キャビン」、乗員を「クルー」、機長を「キャプテン」と言うのも船から倣っています。
 このように飛行機と船では共通する用語が多く、船の慣習もまた飛行機に多く引き継がれています。ですから、人の乗り降りは左舷で行うという船の慣習が時代を経て、飛行機へと引き継がれ、乗り降りには大体、左側のドアを使うのです。
 それでは、なぜその他のドアがあるのかというと、通常、機内を掃除したり、次のフライトの食事や販売品を機内に搭載するために使用されます。機体左側のドアは「パッセンジャー・エントリー・ドア」、右側のドアは「サービス・ドア」と呼ばれます。
 また、ドアは非常脱出口として大切です。飛行機のドアの総数は、非常時に片側のドアから90秒以内で、搭乗している全員が脱出できるだけの数を取り付けるように決められています。ボーイング747-400は最大搭乗数568名で12カ所、ボーイング777-200は最大搭乗数389名で8カ所といった具合です。
 皆さまを各地に運ぶ飛行機には、船の慣習が息づいています。

※左側のドアを使用するのは原則ですが、空港設備や状況に合わせて右側のドアを使用することもあります。
 
イメージ
Illustration by Chikara Kunitomo


日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載