JAPAN AIRLINES



航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第57回
[Q] [飛行中の機体は、どう撮るの?]
[A]  テレビのクイズ番組などの賞品で、「空の旅をプレゼント」というコメントと一緒に、よく飛行機が雲の上を滑るように飛行する映像が映ります。旅に出たくなるような気持ちの良い映像ですが、一体どのように撮影しているのか、気になっている方も多いでしょう。
 近年はコンピュータ・グラフィックスなどが進化して、そうした映像を作ることも可能になっていますが、実際に撮影した映像の迫力にはかないません。
 雲の上を巡航する飛行機の映像は、さまざまな角度から撮影できる特殊なカメラ機材を搭載した別の飛行機が同行し、撮影します。モデルとなる飛行機と撮影用の飛行機は、必ずしも同じ機種ではないため、同じ高度まで上昇し、ほぼ同じスピードで飛行するための技術も求められます。もちろん、飛行機のそばは空気が乱れているので、あまり近づいて撮影することはできません。
 そんな撮影用の飛行機を使っても、一つだけ撮れない映像があります。それは、飛行機の真後ろからの映像です。なぜなら、目には見えませんが、飛行機はそのエンジンから強烈な空気を後ろに吐き出しているので、後方にいるとその空気の流れに巻き込まれてしまい、飛行機の姿勢を保てなくなるからです。大きな空港では、離陸しようとする飛行機が、誘導路で順番待ちをする光景が見られます。これも同じことで、先に離陸していった飛行機が後方に吐き出した空気に巻き込まれないように、しばらく時間を置いてから滑走路に進入しているのです。
 では機内から、他の飛行機が飛んでいる様子を、この目で見ることはできるでしょうか? 答えはイエスです。もちろん、テレビで見るような至近距離からは無理ですが、遠方をものすごい速さで飛んでいく飛行機を見ることは可能です。以前、東京から札幌に向かう巡航中に、自分とは逆に、東京方面に向かっている飛行機を窓の外に発見したことがあります。もちろん、自分が乗っている飛行機は時速約900キロ近くで飛んでいますし、相手の飛行機もほぼ同じ速度で逆方向に飛んでいるわけですから、あっという間に、窓の視界から消えていきます。「自分は、すごい速さの乗り物に乗っているんだ!」と実感できた瞬間です。
 ふと、外を見たとき、皆さんも他の飛行機を発見できると良いですね。
 
イメージ
Illustration by Chikara Kunitomo


日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載