JAPAN AIRLINES



航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第56回
[Q] [飛行速度は、どうやって測る?]
[A]  道路を走る自動車や線路を走る電車は、そのタイヤや車輪の回転数によって速度を知ることができます。では、空を飛ぶ飛行機は、どのようにして速度を測っているのでしょうか?
 飛行機には、速度を測定するための「ピトー管」と呼ばれるクダが、胴体前方の周辺に針のように飛び出して取り付けられています。風の無い日に自転車をこいで、どんどんスピードを上げていくと、自分の顔に当たる風が、徐々に強くなるのを感じます。飛行機も進行方向正面からくる空気の圧力(動圧)と、その横を通り過ぎる周囲の空気の圧力(静圧)の差を測定することによって、速度を知ることができるのです。
 静圧は、高度が上がるほど低くなります。つまり、空気は上の方ほど薄くなっているので、この静圧を測ることで、飛行高度も知ることができます。実際の飛行機では、さらにこの情報を外気情報処理機(ADC:エア・データ・コンピュータ)と呼ばれる装置に入力し、温度や気圧などのさまざまな補正をして、操縦室の速度計に表示しています。
 皆さんが機内でよく目にする飛行情報(PFIS:パッセンジャー・フライト・インフォメーション・システム)は、このADCからの情報を表示しています。一緒に表示されている到着予想時間などは、飛行経路などを計算しているFMC(フライト・マネジメント・コンピュータ)と呼ばれる別のコンピュータからの情報です。
 よく見ていると、時速約900キロ近くの高速で飛行しているにもかかわらず、残りの距離を考えると、予想到着時刻が合わない場合があります。
 前に述べた通り、このADCで計算された速度は「対気速度」と呼ばれる速度で、周囲の空気の流れに対する速度です。向かい風の中で自転車をこげば、体に感じる速度はすごく速く感じますが、実際にはそれほど速く進んでいません。特に、これから冬にかけて、西に向かって飛ぶ飛行機は、強い偏西風の影響を受けて、時速約360キロにもなる向かい風の中を飛ぶことになります。
 そのため、別のコンピュータ(慣性航法装置)が「対地速度」、つまり地面に対して飛行機が実際に進む速度を計算し、そこからFMCがはじき出した計算結果を、到着予想時刻として皆さんに表示しているというわけです。
 
イメージ
Illustration by Chikara Kunitomo


日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載