JAPAN AIRLINES



航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第55回
[Q] [主翼の仕組みはどうなってるの?]
[A]  鳥が空に舞い上がろうとするときや、木の枝に止まろうとするときを思い起こしてください。たくさんの空気をとらえるために、鳥は翼や羽を大きく開きます。
 こうした翼の動きは、飛行機にも取り入れられています。飛行機の主翼は大きな一枚板のように考えている方も多いようですが、実はいくつものパーツから構成された集合体で、状況に応じて、その面積を変化させています。今回は、そんな主翼の秘密をご紹介しましょう。
 では、なぜ主翼は、面積を変える必要があるのでしょうか。以前にもご説明しましたが、飛行機は「揚力」によって、空を飛ぶことができます。そして、主翼の面積が大きく、多くの空気を受けることができるほど、揚力は増します。
 速度をそれほど上げることができない離着陸時。飛行機は、主翼の前側部分と後ろ側部分に取り付けられた「高揚力装置」と呼ばれるパーツを前後に広げ、主翼の面積を大きくします。主翼の見える座席の窓からは、この動きがよく分かります。主翼のパーツがそれぞれ離れ、一見、すき間だらけのように見えますが、主翼の上下を通過する空気の流れが変わり、揚力は大きくなり、飛行機はより浮かびやすくなります。
 そして離陸後、飛行機は上昇し、どんどん速度を上げます。いつまでも主翼を広げていると、今度は空気との摩擦抵抗が増えて、速度が上げられなくなるので、上昇すると間もなく高揚力装置を主翼の中にたたみ込みます。これで飛行機は、時速約900キロ近くまで、速度を上げることができるのです。
 ちなみに、高揚力装置のうち、主翼の前側部分(前縁)は機種により、そのまま前方に押し出すスラットと、主翼下面に折りたたまれている面を前方に押し広げるバリアブル・キャンバーフラップの2種類があります。いずれも、前縁の形を崩さず、面積を大きくするようになっています。
 そして、後ろ側部分はスロッティッド・フラップと呼ばれ、2枚もしくは3枚の横長の板が重なって、スライドしながら降りてきます。それぞれの板の間にすき間(スロット)を作ることによって、主翼上面の空気の流れをスムーズにし、揚力を増大させています。
 飛行機が駐機場から滑走路に向かって動き出すと、すぐ高揚力装置は大きな音を立てながら動き始めます。また、フライトコントロール・チェックと呼ばれるさまざまな舵面の動きの確認を、このときに行うので、その他の小さな翼も動きます。
 もし座席が主翼付近の窓側になったときは、これらの動きをご覧になってみてはいかがでしょうか。
 
イメージ
Illustration by Chikara Kunitomo


日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載