JAPAN AIRLINES



航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第49回
[Q] [飛行機の窓は開くの?]
[A]  新年度となり、入学式や入社式をあちこちで迎えて、「日の丸」を見かけるようになりました。
 さて、テレビのニュースなどで、政府要人が世界各地を訪問するとき、飛行機に国旗が立ててあるシーンを目にすることがあります。この国旗は、着陸してから窓、もしくはドアを開けて立てるのですが、「飛行機の窓は開けられるの?」と、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。そこで、今回は操縦室(コックピット)の窓についてお話しします。
 操縦室には、前方および側方の視界を確保するために6枚、機種によってはそれ以上の窓(ウインドーシールド)が取り付けられています。操縦室内にある2つの座席のうち、機長の操縦席となる左側正面にある窓をL1ウインドーと呼び、左回りに順番にL2、L3ウインドーとなります。同様に、右側の操縦席はR1、R2、R3ウインドーと呼ばれます。DC10、ボーイング737、ボーイング767、ボーイング777の機種では、L2、R2の2枚のウインドーシールドが開閉可能となっています。2枚とも、ワゴン車のドアのようにスーッと横にスライドして動くことから、スライディング・ウインドーとも呼ばれています。ですから、これらの機種の場合、ここから窓を開けて国旗を立てているのです。
 しかしながら、窓が開かない機種もあります。日本政府専用機で使用されているボーイング747-400やボーイング747です。これらの飛行機には、操縦室上方に非常脱出口があり、そこを開けて国旗を立てています。
 なお、前述のスライディング・ウインドーも、パイロットの非常脱出口を兼ねています。
 夏から秋にかけて、滑走路に虫が多い季節になると、ウインドーシールドに虫が当たり、汚れることが多くなります。この汚れが視界の妨げになる場合は、窓拭きをしなければなりません。スライディング・ウインドーのある飛行機では、簡単に窓を開け、身を乗り出して窓を拭くことができるのですが、ボーイング747は窓が開かないためひと苦労です。非常脱出口からお湯をかけたり、柄が曲がったモップで拭いたりと、大変な作業となります。
 そこで大きな空港には、ウインドーシールド・クリーニング車と呼ばれる専用の作業車があります。ボーイング747のように操縦室の窓が機体の先端より後ろにある場合、作業台がまっすぐ上がる通常の高所作業車では、窓拭きの作業は困難です。しかし、この専用車を使うと、機体の先端部分をかわすように、作業台がZ型に立ち上がってスライドし、ちょうどウインドーシールドの位置に合うようになっています。その上で、私たち整備士が窓を拭いています。ちなみに、作業台は10メートルを超える高さになります。
 コックピットからの視界を確保することも、整備士の大きな役割なのです。

 
イメージ
Illustration by Chikara Kunitomo


日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載