JAPAN AIRLINES



航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第48回
[Q] [機内で使われる水の量は?]
[A]  近頃、デパートやスーパーに行くと、多くの種類のミネラルウォーターが店頭に並び、健康ブームから水への関心が高まっていることを感じます。そこで、今回は「機内の水」のお話をしましょう。

 飛行機には、機体の中央もしくは後部の客室床の下側に、水の貯蔵タンクが搭載されています。機体の種類によっても違いますが、国内線で400リットル、国際線で1200リットルもの水をタンクに貯めて飛行しています。

 これらの水は、機内の「飲料水」と書かれた数ヵ所の蛇口から出る飲み水となったり、飛行機の台所であるギャレーで使用しています。また、洗面台の水やお湯、トイレにも使用されています。つまり、機内で使用される水は、ほとんどすべてこのタンクから使用されているのです。

 飛行機には夜中に駐機している間、もしくは出発する朝に、水が供給されます。水供給車(ウォーター・サービスカー)によって飲用水道水を運び、駐機場にて飛行機に搭載します。

 そして、私たちが日常使っている水道が、水道局によって水圧をかけられ、それぞれの家庭まで送り出されているのと同じように、飛行機でもタンクの中に圧縮空気を入れることで、客室よりも低い場所にある水を押し出し、蛇口を押すと水が出てくるようになっています。この圧縮空気は、エンジンが回っているときはエンジンから、地上でエンジンが停止しているときは、飛行機に搭載されている専用の空気圧縮機(コンプレッサー)を使って、作り出しています。

 さて、機内で使用されたあとの水はどうなるのでしょう。トイレの水や汚物は、専用タンクの中に集められて、地上で処理されます。それ以外の水は、胴体の下に取り付けられている排水塔(ドレイン・マスト)から機外に放出されます。「飛行中に機外に出したら、雨になって降ってくるんじゃない?」と思われる方もいるでしょうが、ご心配なく。飛行機は時速約900キロで飛んでいるので、一瞬のうちに空中に分散してしまいます。

 地上で私たち整備士が作業しているときに、洗面台やギャレーの水が流れると、突然ドレイン・マストから水が出てきて、すごく驚きます。それを避けるために、私たちはこのドレイン・マストに近づかないようにしています。

 トイレを洗浄するために、一回あたり200CC(牛乳ビン一本分)の水が使用されます。飛行中、限りある水にとって、この量が多いか少ないかは、皆さんの判断にお任せしましょう。

 
イメージ
Illustration by Chikara Kunitomo


日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載