JAPAN AIRLINES



航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第46回
[Q] [「ベルトは腰の低い位置で」とは?]
[A]  「シートベルトは、腰の低い位置でしっかりとお締めください」  機内にアナウンスが流れると、飛行機はまもなく離陸滑走を開始します。ところで、なぜわざわざ「腰の低い位置」と言うのでしょうか。また、これにはどういう意味があるのでしょうか。

 例えば、車を運転していて急ブレーキをかけると、私たちの体は前方へ大きく振られます。この現象が飛行機の離陸滑走中に起きた場合、時速200キロ近いスピードから停止しますので、私たちの体は前方へ振られるどころか、ものすごい力で座席から放り出されてしまいます。

 そこでシートベルトが大切になってくるわけですが、飛行機に取り付けられているイスやシートベルトは、前方へ約10倍の重力加速度(10Gの力)がかかっても、外れないように設計されています。飛行機が急ブレーキをかけた際に、腰骨より上にシートベルトをしていると、ベルトがおなかに食い込み、強い力で圧迫されてしまいます。こうした危険を防ぐために、シートベルトは腰骨の辺り、言い換えれば「腰の低い位置」で締めるのです。

 車の運転席や助手席のシートベルトと違い、飛行機のシートベルトには上半身を止めるベルトがありません。では、どうやって上半身を支えるのでしょう。機内のビデオ案内などで説明しているように、飛行機では緊急時、上半身を前の座席の背もたれにあずけます。背もたれは、上半身が振られる力を吸収しながら前方に倒れ、衝撃を和らげてくれる仕組みになっています。ですから、飛行機の離発着時には、後ろの人の安全のために、背もたれを元の位置に戻し、立てておかなければならないのです。

 ちなみにシートベルトの中には、特別なものもあります。お相撲さんが地方巡業に飛行機を利用する場合、普通の長さではベルトが足りないので、延長ベルトを使用したりします。また、自動車ではチャイルドシートの使用が義務づけられていますが、飛行機の座席にも取り付け可能なものがあります。

 その他、お休みの際には、客室乗務員が確認できるように毛布の上からシートベルトを締めるなど、シートベルトに関する詳しい内容は、機内の「安全のしおり」で説明してありますので、ご搭乗の際にはぜひご覧ください。

 新しい年の初め。ベルトも心もしっかりと引き締めて、良い一年を送りたいものです。

 
イメージ
Illustration by Chikara Kunitomo


日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載