JAPAN AIRLINES



航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第43回
[Q] [機内が静かなのはなぜ?]
[A]  飛行機は休暇をリゾートで過ごす人、仕事に向かう人、帰省する人などさまざまな方に利用していただいています。人によって機内での過ごし方もさまざまではありますが、やはり静かに過ごしたいものですね。

 地上から眺める飛行機は、ものすごく大きな音を立てながら飛んでいきます。しかし、飛行機に乗っているとそうした騒音はほとんど聞こえません。これはなぜでしょうか?

 音速に近いスピードで飛行するために、飛行機の外側では、エンジンが高速で回転しています。また、機内の温度を調節するためのエアコンも、エア・サイクル・マシーンと呼ばれる機械を回転させています。一般的に速く回転する物体は、高周波と呼ばれる音域の騒音を発生させますので、「キーン」というよく耳にする高音が出るのです。音は空気を通して伝わります。飛行機の外にいる人にはこれらの騒音が聞こえますが、アルミ合金の外板で密閉され、空気が遮断されている機内には伝わりません。だから、飛んでいる飛行機の機内は静かなのです。周りがうるさいにもかかわらず、車の中に入ると静かなのと同じことで、車という密閉された空間の中にいることによって、音が伝わってこないためです。

 さて、うるささを表す単位として「db」(デシベル)という単位があります。車が頻繁に通行する繁華街のうるささがおよそ50dbなのに対して、飛行機のエンジン運転中の騒音は100db以上となります。もちろん私たち整備士も、耳栓やイヤーマフといった安全器具なしでは、うるさくて飛行機に近づくことができません。しかし、出発作業ではそんな騒音の中、機内の操縦士と地上の整備士が連絡を取り合いながら、トーイングトラクターの切り離しを行ったり、整備士がエンジンの試運転をしたりしています。このとき、携帯電話のような集音式のマイクでは、周りの騒音も入ってしまい声を伝えることができません。

 そこで活躍するのが「咽喉マイク」です。これは私たちがしゃべるときの「のど」の振動をマイクが拾い、音声に変換して伝えます。そうすると周りの騒音に関係なく、声だけが操縦室に聞こえるので、意思疎通が図れるわけです。操縦室と地上が連絡を取り合う場合は、ほとんどの機種の前輪に近い部分にあるインターフォン用のジャックに咽喉マイクをつなぎます。

 近年は「Radio Interphone System(RIS)」と呼ばれる無線タイプがあり、マイクの線の長さに制限されることがなくなりました。飛行機の前輪付近に赤い箱がぶら下がっていれば、RISを使用しているところです。

 
イメージ
Illustration by Chikara Kunitomo


日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載