JAPAN AIRLINES


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航空豆知識


文 日本航空 一等航空整備士
第40回
[Q] [どうしたら整備士になれるのか?]
[A]  「いってらっしゃい!」そんな思いを込めながら、私たち整備士は駐機場から出発する飛行機に手を振っています。深夜から整備を行い、朝一番に出発していく飛行機を見送ったあとには、なんともいえない充実感につつまれます。航空業界というとパイロットや客室乗務員といった華やかな世界に目がいきがちですが、今回は縁の下の力持ちといえる整備士のお話です。

 整備士は飛行機を安全に運航するために、さまざまな仕事を行います。現在、1機の飛行機には複数の整備士が付き、整備状況をモニターしていく制度がとられています。

 整備士になるためには、各航空会社や整備会社によってさまざまですが、航空専門学校や工業高等専門学校、大学などを卒業して就職するのが一般的です。飛行機はアメリカやヨーロッパで作られており、その整備方法も英語で説明されているので、英語の理解力がとても重要になります。整備士になろうとするなら、数学や物理、化学といった基礎的な分野ももちろんですが、英語力をつけておくことが大切だと思います。

 入社後、整備士として働く人は、飛行機の基礎や整備方法、専門用語などさまざまな勉強と整備実習を受け、最終的には各機種ごとの「一等航空整備士」という国家資格の取得をめざします。この資格を得るために、私たち整備士は膨大なマニュアルと資料を相手に約1年間勉強するのです。学科試験と実地試験が何度も行われ、社内審査、国土交通省の試験官による最終審査を経て、ようやく一等航空整備士の資格が与えられます。ジャンボ機ともなれば約500人のお客様の命を預かるわけですから、勉強するのも真剣そのものです。

 さて、勉強のことばかり話してきましたが、机の上だけでは身につかない、整備士として重要なものがあります。それは実際の仕事の中で、ある意味で最も大切となる判断力や決断力、仲間の整備士と一緒に仕事をしていく上での協調性、リーダーシップを取る能力、そして「何かおかしいぞ」と察知できる勘です。こうした能力は、飛行機のシステムを知っているだけでは一概に備わるものではありません。猛勉強で覚えるというよりも、子供の頃から友達と遊ぶ中で、自然と身についてくるものです。だから、整備士になるためには「よく学ぶ」だけではなく、「よく遊ぶ」ことが大切です。

 今日も皆さんがお乗りになる機内の窓の向こうには、飛行機の出発を温かく見守りながら手を振る、こうした整備士がいるのです。

 
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Illustration by Chikara Kunitomo

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日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載