JAPAN AIRLINES

第7回
航空豆知識
Q, 飛行機の窓はなぜ小さいのか?

 
A,  飛行機の窓から外を眺めたとき、幻想的な光景に心を奪われ、思わず窓に顔を近づけて見入ってしまう経験をしたことはありませんか。沈みゆく夕日に赤く染まる雲海、はるか遠くの地上にきらめく夜の街の灯、青い海に浮かぶ島や、雪を抱いた山脈の峰。空気の澄んだ上空からは、夜空の星もさらに輝きを増して見えます。
Image1 もし、窓がもっと大きければ、通路側の席の人たちも、外の景色を楽しむことができるのに……。なぜ飛行機の窓は、あんなに小さいのでしょうか。
 飛行機の窓はガラスではなく、3層の透明のプラスチック(アクリル)の板でできています。飛行機を設計するときには、いかに軽い材料を使うかが重要になってきますが、アクリルはガラスよりも軽く、しかも柔軟性があって加工がしやすいため、飛行機にはとても適した材料なのです。
 さて、飛行機が飛んでいるときは、機内を地上と近い気圧に保つために、与圧という圧力が加えられていて、その圧力は最大8psi(1cm2当たり560g)にもなります。そのため、飛行機の機体は、与圧に耐えられるよう、幾重にも柱が巡らされた設計になっています。
Image2 実は、飛行機の窓が小さいのには、2つの理由があって、ひとつは、機体の柱が邪魔をして、窓枠を大きくとることができないため。ふたつめは、窓を大きくするために、窓を厚くしたり、窓をはめ込む機体の柱を太くしたら、機体が重くなって、飛べなくなってしまうためです。
 それでも、操縦席の窓だけは、視界を確保するために大きくつくられているのですが、そのかわり、厚さも重さも客室の窓とは比べものになりません。ちなみに、操縦席の窓はアクリルとガラスの5層構造で、厚さは合計で45mm、重さは約70kg、飛行中に鳥が衝突しても大丈夫なように設計されています。
Image3 客室の窓はどうかというと、3層のうち、最も外側が厚さ9mm、中央が6mmで、この2枚が主に与圧に対する役割を果たしています。どちらも1枚だけでも十分与圧に耐えられるのですが、もしひとつがだめになっても、もうひとつが支える「フェイル・セーフ(Fail-Safe)構造」という設計によって、より安全性が高められているのです。
 ところで、ガラスと違って、アクリルには、傷がつきやすいという欠点があります。時速約900kmで飛ぶ飛行機の客室の窓は、空気中に含まれる埃や火山灰といった目に見えないほど細かな塵でも傷がつき、外の景色が見えにくくなってしまうのです。われわれ整備士は、窓の小さな傷ひとつにも、日夜気を配っています。これからも、日本航空の飛行機の窓からは、すばらしい景色がご覧いただけることと思います。


Phot
柱が幾重にも巡らされたボーイング747-400の胴体内部。こうしてみると、柱と柱の間に窓があるのがよくわかります。
写真提供:JALフォトサービス
日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載