JAPAN AIRLINES

第5回
航空豆知識
Q, 飛行機のトイレはどうなっているのか?

 
A,  長い時間の空の旅では、だれでも必ずお世話になるものがあります。機内でおいしい料理やワインに舌鼓を打ったあと……。そう、今回はお食事中の読者の方には失礼して“トイレ”についてのお話です。
 現在、日本航空では多くの飛行機を所有していますが、トイレの種類は大きく分けて2種類あります。
 1つは、ボーイング747型機やDC10型機についている「循環式」と呼ばれるものです。循環式はそれぞれのトイレの下に汚物をためるタンクをもっていて、その名の通りタンク内の水を循環させることでトイレを洗浄しています。
Image1 もう1つは、ボーイング767などの飛行機で採用されている「バキューム式」と呼ばれるトイレです。この形式では、機体の後方に「ウェストタンク」と呼ばれる数個の汚物用タンクを装備し、機内各所のトイレの汚物をまとめるという方法を採用しています。
 では、どのようにして機体の前方や中央のトイレから汚物を集めているのでしょうか?
 それぞれのトイレとタンクはパイプでつながれていますが、大量の水を使って汚物を流すわけにはいきません。いうまでもなく、飛行機に積み込める水の量は限られているからです。
 しかし、水を再利用すれば、使うごとに汚くなります。また、機体の構造上、トイレとタンクにそれほど高低差があるわけではないので、極端にパイプに傾斜をつけるというわけにもいきません。
 秘密は、機内と機外の気圧の差にあります。通常飛行機が飛んでいる高度約1万mの上空では、機内は約0.8気圧、機外は約0.2気圧となっています。ここで重要なのは、空気には気圧が低いほうに流れる性質があるということです。
Image2 実は、トイレとタンクを結ぶパイプは機外と通じています。皆さんが水洗ノブを回すと、トイレとパイプを遮断しているバルブが開き、汚物は少量の水とともに、気圧の低いタンクのほうへと、シュゴーッという音をたてて流れていきます。このときに、空気は機外に逃げ、汚物だけがタンクに集められます。
 それでは、機内と機外の差圧差が生じていない地上や、差圧差の小さい低い高度を飛んでいるときに、トイレを使用した場合はどうなるのでしょうか。
 そのときは「バキュームブロア」と呼ばれる機械が活躍します。これは、どういうものかというと、ちょうど皆さんの家庭にある掃除機を大きくしたような機械を想像していただければと思います。地上や低い高度(約3000m以下)では、このバキュームブロアでタンク内を真空に近い状態にして、機内との差圧を作り出しています。
 最新型のボーイング777も、このバキューム式のトイレを採用しています。バキューム式の場合、汚物と一緒に周囲の空気も吸い込むので、臭いの心配もなく、機内でより快適に過ごすことができるのです。いうなれば、飛行機の中の“下水道”でしょうか。
 実は、飛行機による海外旅行が始まったばかりの頃は、トイレの汚物をそのまま外に出し、空中分解させていました。こんなことは、もちろん、技術が発達した現在では考えられないことです。
Image3 飛行機のトイレは、一見普通のトイレのようですが、その裏にはいろいろな仕組が隠されているのです。


Phot   時刻表
ファーストクラスのラバトリー。このトイレの画期的な点は、窓があること! 整備中のボーイング767。通常は壁で隠れていますが、機体後部、客室より下に「バキューム式トイレ」の「ウェストタンク」があり、その上部に2機の「バキュームブロア」がついています。
日本航空月刊誌『Agora』1998〜2003年掲載