「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
Captain85 滑走路の溝文=中村貴幸(日本航空機長)
一日に何度も、飛行機が離着陸を行う滑走路。着陸の際には、数十から数百トンにもなる機体が上空から降りて接地するため、そうした大きな衝撃にも耐えられるよう、滑走路は丈夫に作られています。
皆さんの中には、滑走路の上を歩いた経験をお持ちの方はいますか? もしくは、飛行機が滑走路上を走行しているとき、路面を注意してご覧になったことはありませんか?
硬いアスファルトやコンクリートで覆われ、平らに見える滑走路ですが、多くの場合、表面に細かな溝がたくさん刻まれていることに気付かれると思います。
この溝は「グルービング」と呼ばれるもので、滑走路を左右に横切るように、幅6ミリ、深さ6ミリの溝が32ミリ間隔で刻まれています。目的としては、着陸時にタイヤのグリップ力を高めること、さらには、雨天時に滑走路上の水はけを良くすることです。
JALグループが運航している国内空港の滑走路のほとんどは、グルービングが施されています。また、水はけの効果をより高めるために、滑走路の中央部が両サイドに比べて少し高くなっています。「細かい溝があったら、飛行機が離着陸したり、走行したりすると、滑走路は傷みやすくなりませんか。でも、滑走路が工事中というのは、あまり見ないけど」と、思う方もいらっしゃるでしょう。
実際、滑走路の表面が劣化したり、ひび割れたりすることも少なくありません。そのための修復工事が必要となりますが、一般道路で行われる水道管工事などのときのように、一部だけを張り替えるということはしません。工事の必要な箇所が決まったら、そこを含めた滑走路の横幅すべてを張り替え、改めてグルービングを刻みます。こうした工事の多くは、運航に支障のでにくい深夜の時間帯に行われています。
飛行機の着陸を手助けしてくれるグルービングですが、JALグループが運航する空港の中で一ヵ所だけ、この溝が施されていない滑走路がありますが、分かりますか。それは三沢空港(青森県)です。ここの滑走路はアメリカ空軍が管理しており、センターを示す中心線灯が設けられていないなど、他の多くの滑走路とは異なっている部分があります。
滑走路にグルービングがない分、特に雨天の際は着陸時の制動距離が長くなりますので、それらもしっかりと計算に入れ、私たちは日々の安全運航に努めています。
日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)

