「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
Captain81 滑走路でのUターン文=中村貴幸(日本航空機長)
旅客機が目的地の空港へ近づき、やがて滑走路に着陸しました。次第に速度をゆるめながら走行し、「どこで曲がるのかな?」と思っていると、ターミナルビルの前を横切り、滑走路の端まで走っていって、ゆっくりとUターン。
「旅客機って、Uターンするんだ」と、驚かれたことのある方もいらっしゃると思います。
最近は、国内にある空港の整備が進み、離着陸の際、旅客機は誘導路を走行することが多くなっていますが、その一方で、地方空港のなかには、滑走路と平行する誘導路が設けられておらず、旅客機が滑走路の端でUターンするところもあります。
私が担当しているMD-90は、こうした滑走路でUターンをする空港へ運航することがあり、例えば「いわて花巻空港」(岩手県)、「山形空港」(山形県)、「出雲空港」(島根県)などが挙げられます。
これらの空港では、滑走路の両端に「ターニングパッド」と呼ばれるUターンのための膨らみが設けられています。さらに、Uターンを行うための目印となる黄色い線が引かれ、夜間や雨天、降雪などで線が見えにくい場合の補助となるライトも設置されています。
通常、ジェット旅客機が使用する空港の滑走路は、幅が45メートル以上あります。MD-90は全長46.5メートル、左右幅は主翼の端から端まで32.9メートルなので、ターニングパッドがあるとはいえ、滑走路上でUターンするのは難しいように思われませんか?
しかし、機体は大きくても、滑走路に接しているのはタイヤだけです。MD-90の場合、前輪と後輪の距離は23.5メートル、後輪の左右間の距離は5.1メートルで、計算上はターニングパッドがなくても、十分にUターンすることができます。しかも、前輪は82度まで回すことができるため、機体のわりに小回りが利くようにできているのです。
旅客機のUターンについて話してきましたが、最後にちょっとユニークな滑走路をご紹介しましょう。前述の「いわて花巻空港」は、2005年に滑走路が2000メートルから2500メートルに延長されました。そのため、滑走路の南端から500メートル手前のところに、今は使われなくなった、かつてのターニングパッドの名残があり、滑走路の幅がちょっと広くなっています。
ご旅行やお仕事などで、ご利用される機会がありましたら、ぜひ注意してみてください。
日本航空 月刊誌『Agora』より(2003年から連載中)

