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Captain 69 |
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文=中村貴幸(日本航空機長)
Text by Takayuki Nakamura
イラスト=國友主税 Illustration by Chikara Kunitomo |
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皆さんは普段、「空気の濃さ」を感じることはありますか?
登山やハイキングをされる方でしたら、標高の高い場所へ行って、「空気が薄いね」と感じた経験をお持ちでしょう。また、「今日は雨だから、体がだるい」など、低気圧による体調の変化を感じられる方もいらっしゃるようです。
どうして、こんな話をしたかというと、空気は季節(気温)や高度によって圧力が大きく変わり、上空を飛んでいる時、機内の空気は地上に比べて「薄い」というのを説明したかったからです。とくに、本格的な冬へと向かっていくこの時季は、日本全国で気温が下がっていくため、空気は濃くなっています。
では、空気の濃さというのは、いったいどのくらいの影響力があるのでしょうか。
プロ野球などが行われる「東京ドーム」は、内部に空気を送り込み、気圧を高くすることで大きな屋根を持ち上げていることが知られています。内側と外側の気圧差は約0.3%で、ビルの1階と9階に相当する違いだそうです。人間にはほとんど感じられない気圧差ですが、これで総重量およそ400トンにもなる屋根を支えているのですから、空気の力がいかにすごいかを感じます。
また、高気圧に覆われて晴れている時と、低気圧が来て雨が降っている時の気圧差はどうでしょうか。例えば、高気圧の中心が18018ヘクトパスカル(hpa)で、低気圧の中心が998hpaだった場合、その差は20hpaです。この気圧差はおよそ2%で、「東京ドーム」の数値と比べると、気圧の違いがどんなにあるかが分かります。
飛行機の機内では、「与圧」と呼ばれるシステムで、気圧を調整しているのをご存じの方も多いと思います。高度1万メートルの場合、外気はおよそ0.2気圧で、人間がいられる気圧ではとてもありません。そこで、快適に過ごせるよう、機内に圧縮空気を送り込み、およそ0.8気圧になるようにしています。地上にいる場合と比べての気圧差は約20%、標高2000メートルぐらいにいるのと同じ環境です。機内では、座席に着いていることがほとんどですので、あまり空気の薄さを感じないでしょうが、仮に運動をしたら、かなり息が苦しくなるはずです。
普段はあまり意識することのない空気の濃さ。ちなみに、機内で飲むお酒が回りやすいのは、空気が薄く、アルコールの処理能力が低下するためです。 |
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| 日本航空 月刊誌『Agora』2003年より連載 |