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コックピット日記
Captain 66
文=三輪邦雄(日本航空機長)
Text by Kunio Miwa
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
腕時計の習慣
 時刻はお昼の12時。これから羽田空港を飛び立とうとしている旅客機に、皆様はご搭乗されています。腕時計を見ながら、「今日は時間通り、正午の出発だな」などと思われている頃、コックピットの中では、時として管制官とこんな交信がされています。
「こちら管制塔よりJAL〇〇便へ。現在午前3時、出発を許可します」
 実際には英語でのやりとりですが、要約するとこのような感じです。
「でも、午前3時って言ってるけど、正午じゃないの?」と不思議に思われる方もいるでしょうが、午前3時で正解です。日本の時間では正午ですが、コックピットの中は午前3時なのです。
 国や地域を越えて飛んでいる旅客機では、多くの分野で世界共通のルールが採用されています。「英語での交信」もその一つですが、実は「時計」にも統一時刻が使われています。
 皆様も海外旅行をされて経験があると思いますが、国によって採用している標準時が違いますし、国内でも時差があったり、サマータイムが実施されたりもします。
 そこで空の世界では、世界共通の標準時間である「協定世界時」(日本の時間からマイナス九時間)が使われており、ボーイング777のコックピットにある二つの時計も協定世界時が示されています。
 これら大型旅客機に備えられている最近の時計は、人工衛星からの信号を得て、常に正確な時間を示すのですが、一昔前の旅客機や小型機などではパイロットが時計を合わせていました。私が訓練生時代のことですが、自分の腕時計が20秒遅れていたのに気付かず、それに合わせたため、コックピットの時計を20秒遅れて設定したことがありました。すかさず教官に指摘され、ひどく怒られた経験があります。たかが20秒と思われるかもしれませんが、高速で飛行する空の世界では、数秒が重要な意味をもつことも多いのです。
 そうした教えを受けてきたパイロットは、自ずと腕時計の時刻を正確にしておく習慣が身に付いています。昔は毎日、時報に合わせて確認していましたが、最近は自動的に時刻を合わせてくれる便利な電波時計があります。そのため、腕時計を購入する際は、電波時計を選ぶパイロットが多いようです。
 ところで、客室乗務員の腕時計にも特徴があります。ある機能が付いているように指導されていますが、何だかお分かりになりますか?
(答えは下にあります)
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(答)機内で、心拍数などを計測する可能性に備え、客室乗務員は秒針(秒を測れる機能)付きの時計を身に付けるようにしています。
日本航空 月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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