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Captain 65 |
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文=中村貴幸(日本航空機長)
Text by Takayuki Nakamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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楽しみにしていた旅行の出発日。天候も素晴らしく、空港を飛び立った旅客機の窓からは、どこまでも広がる風景を眺めることができます。
入り江や湾が続く海岸線、谷に沿って流れる河川、緑がいっぱいに広がる美しい山々など、変化に富んだ日本の景色は、いつまで眺めていても飽きることがありません。
そんな時、
「あれは、なんていう山だろう?」
「山の形からすると、浅間山じゃないかなぁ」
お客様の間で、こんな会話が交わされることもあるそうです。
富士山、浅間山、御嶽山、伊吹山などは、山の形に特徴があり、しかも周囲に同じような高さの山がないので、すぐに分かるだろうと思うかもしれません。地上から眺めた場合は確かにそうなのですが、旅客機が飛ぶ高度10,000メートルの上空から眺めると、山の起伏が乏しくなるため、よく知っている山でも、案外、分からなくなるものです。
そのため、機内から山の景色を楽しみたいという方には、離陸直後や降下中で高度の低い時がおすすめです。例えば、熊本空港では近くにある阿蘇山、女満別空港では飛行ルートに近い雌阿寒岳が楽しめます。
また、短い距離を運航する路線もおすすめです。とくに、日本海側の都市と太平洋側の都市を結ぶフライトの場合、巡航中の高度が低い時には6000メートルほどです。そして、飛行ルートの周辺にある山々の標高も高く、3000メートル級の名峰も数多くありますので、絶好の眺めが楽しめます。
具体的にいうと、大阪や名古屋から新潟、東北の秋田・青森を結ぶ路線がおすすめです。大阪や名古屋から新潟へ向かう便では、飛び立った後、日本百名山にも選ばれている御嶽山、北アルプスの乗鞍岳、穂高岳と続き、妙高山、さらには日本海に臨む弥彦山と、本当に美しい風景が続きます。
名山を眺められる路線はこの他にもありますが、いずれの場合も、太陽の光が赤みを帯び、斜光となる朝方や夕方のほうが、山の起伏が浮き上がって、風景を楽しむには最適です。もちろん、晴れていればという条件ですが、そんな幸運な便を私が担当できた場合には、お客様にも楽しんでもらえるよう、機内アナウンスをする際、可能な範囲で窓から眺められる風景の説明を入れるようにしています。
そんなフライトでは、ぜひ、窓からの風景をご覧ください。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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