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Captain 64 |
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文=南雲恒昌(日本航空機長)
Text by Yoshimasa Nagumo
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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「東南アジアに来たら、食事はやっぱり屋台。安くて美味しいから、ついつい食べ過ぎてしまいがち。そのせいか、ちょっとお腹の調子がいまいちだなぁ」
旅先では、食事を楽しみにしているという方も、けっこう多いと思います。私も、最近はクアラルンプールやシンガポールなどのフライトを担当することが多く、滞在先では自分なりの美味しい店を探して、屋台の食べ歩きをしたりしています。
でも、東南アジアに多い辛い料理でお腹の調子を壊した、しつこい油にやられた、料理に火がきちんと通っていなかった、水が合わなかったなどといった話も多く、帰りのフライトで胃腸薬のお世話になった経験をお持ちの方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
私の場合、人一倍、胃腸が丈夫なようで、幸運にもそうしたお腹のトラブルはこれまでありませんし、やはり職業上、健康管理がとても重要なので、食べるものに関しては細心の注意を払っています。
それに、あまり知られていませんが、薬のお世話にあまりなれないというパイロットならではの理由も関係しているのです。
というのも、規則によって、私たちは薬を服用した場合、その効果が切れるまで乗務できないことが決められています。服用後は12時間、24時間など、薬によって時間を空けなければいけない厳しい決まりがあるため、ほとんどのパイロットは自ずと普段から薬を飲まないようにしています。海外旅行では、慣れ親しんだ薬を日本から持参する方が多いと思いますが、パイロットの場合、そもそも薬を持ち歩かない人が多いのです。
東南アジアの場合、多くのフライトは夕方から夜にかけて現地に到着します。仕事を終えた私たちは、ホテルで一泊し、翌日の夜、日本へ向けて出発するフライトを担当するというスケジュールが多くなります。ホテルにチェックインするのは、夜遅くになってしまうことがありますが、やはり疲れを取るという意味でも、旅先での食事は大きな楽しみです。屋台で食べるなら、翌日、ゆっくり食事をした方がいいのでしょうが、出発前に十分体調を整えるだけのゆとりを考えると、屋台に足を運ぶのは、どうしても夜が多くなってしまいます。
時には、お店に入ったものの言葉がまったく通じず、料理を頼むのに苦労することもありますが、それも旅の楽しみですよね。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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