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Captain 62 |
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文=三輪邦雄(日本航空機長)
Text by Kunio Miwa
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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今回は、いきなりクイズを出してみたいと思います。
問題――JAL便が運航している空港で、もっとも標高が高いのは、どこでしょうか?
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飛行機に詳しい方ならご存じでしょうが、答えはメキシコシティにあるベニート・フアレス国際空港です。滑走路は海抜約2230メートルにあり、およそ2000万人が暮らしている大都市です。高地のため空気が薄く、抵抗も少なくなるため、1968年に開催されたオリンピックでは、陸上の短距離や跳躍種目で、世界記録が数多く更新されたことを覚えている方も多いと思います。
最近では、メキシコシティをはじめ、ネパールやチベットなど、標高の高い地域を旅行される日本人も増えていると聞きますが、不慣れな高地のため、高度障害に悩まされた経験をお持ちの方も少なくないでしょう。パイロットの間でも、メキシコシティは平地に比べ酸素が3/4と少ないため、すぐに息切れがしたり、寝不足になるといった症状の出る人がいます。
私の場合、学生時代にアメリカン・フットボールで鍛えていたせいか、幸運にもそうした高度障害はほとんど起こりません。強いて挙げれば、皆さんと同様に、普段に比べてお酒がよく回る程度でしょうか。
この「お酒がよく回る」というのは、高地に行く場合だけと思っている方も多いようですが、実は旅客機の機内でも同じ症状が起こるのをご存じでしょうか。というのも、飛行中、機内は約0.8気圧に保たれていて、メキシコシティにいるのと同じくらいの酸素濃度なのです。そのため、血液中の酸素量が減り、アルコールの処理能力が低下して、いつも以上にお酒が効いてしまいます。
これは他社のパイロットから聞いた話ですが、豪州から日本へ向かう旅客機の中で、外国人のお客様が飲み過ぎてしまい、しかも酒癖が悪く、静かにしようとしません。客室乗務員が落ち着かせようとしたのですが、体の大きな方で、手が付けられなかったといいます。すると偶然にも、同じ便にラグビー強豪チームの選手たちが乗り合わせており、この男性は、彼よりも数段屈強な大男たちの手によって押さえつけられ、酔いが覚めた後は、それまでの威勢はどこへいったのやら、すっかりおとなしくなったそうです。
機内では気分も高まり、ついつい多く飲んでしまいがちですが、何事も適量が大切ですね。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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