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コックピット日記
Captain 57
文=中村貴幸(日本航空機長)
Text by Takayuki Nakamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
フィンランドの思い出
 皆さんはフィンランドというと、何を連想されますか? 森と湖の国、北欧の白夜、サウナ、ムーミンなどでしょうか。
 多くの日本人にとって、フィンランドはあまり馴染みのない国だと思いますが、私にとってはとても思い出深い国で、実は初めて海外へ行った国なのです。それも、旅客機の運航資格を取得するというのが目的でした。
 当時、私が担当しているMDシリーズ(この当時はDC-9)では、実際の旅客機を使った訓練をヘルシンキ・ヴァンター空港にあるフィンランド航空の訓練センターで行っていました。このセンターでは、世界各国の航空会社から委託を受けて実機訓練をしており、私たちの他にもさまざまな国のパイロットがいたのを覚えています。
 訓練期間はおよそ1ヵ月半で、フィンランド航空の旅客機を使って、ヘルシンキからタンペレ、トゥルク、ロヴァニエミといった地方の空港へ飛び、離発着を繰り返すという内容です。教官はフィンランド人で、慣れない英語でのやりとり、離発着時の緊張感など、厳しい訓練の日々を送りました。それでも次第に慣れてくると、巡航中には窓の外に広がる美しい森と湖の風景(陸地の半分くらいが湖に見える!)を楽しむことができましたし、休みの日にはヘルシンキ郊外にあった宿舎から自転車に乗って、森の中をサイクリングしたりしました。
 訓練生の食事は、各自で自炊することになっていたのですが、私たちの時は、日本から同行してきた先輩パイロットが「調理師免許」を持っているという料理好きの方で、連日、腕を振るってくれました。自ずと、休みの訓練生が食材調達の役割を負うことになり、先輩の指示の下、市内にある市場で買い物をしました。ヘルシンキはフィンランド湾に臨んでいるので、新鮮な魚介類が安い値段で手に入ります。そうした美味しい魚を料理し、地元のビールやウオッカと一緒に味わいながら、仲間と語り合ったことを、今でも懐かしく思い出します。
 ヘルシンキでの実機訓練は、私の後、数年でなくなり、現在、MDシリーズの訓練は大分空港で行っています。この時以来、フィンランドを訪れてはいませんが、訓練でお世話になったフィンランド航空が日本航空と同じワンワールドのメンバーでもあるので、今度は家族と一緒に、美しい森と湖を眺めに旅行してみたいと思っています。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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