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Captain 56 |
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文=川村 求(日本航空機長)
Text by Motomu Kawamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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突然ですが、旅客機の大きなジェットエンジンって、どのように始動させるかご存じですか?
「車のエンジンをかけるように、機長が鍵を差し込んで回すんじゃないの」
こう思われている方も結構いらっしゃるようですが、コックピットにそうした鍵はありません。というより、旅客機には車でいうエンジンキーが存在しないのです。
では、どうするのかというと、APU(*1)と呼ばれる補助エンジンで作られる圧縮空気を使って、ジェットエンジンを始動させます。
旅客機が駐機場に停まっている間、メインエンジンは停止していますが、機内清掃や貨物の出し入れ、ご搭乗されるお客様のための冷暖房など、常に電気や空調、圧縮空気などが必要で、APUは動いています。外からその姿を見ることはできませんが、機体後部から勢いよく噴気が出ている様子をご覧になった方もきっと多いことでしょう。
APUは整備士の方々が始動させるので、通常、私たちパイロットが機内に入る時点では、すでに動いている状態です。ですので、出発準備が整った後、私たちはAPUで作られた圧縮空気に燃料を混ぜて、メインエンジンで燃焼させるようコックピット内から操作し、大きなジェットエンジンを始動させているというわけです。
昔、子供たちを整備場に案内して、ジャンボジェット機(ボーイング747)について説明したことがありました。その際、「この旅客機に、エンジンはいくつあるでしょう」というクイズを出したところ、同伴した親たちがさかんに指で「4」を示し、我が子へ合図を送ろうとします。それを尻目に、子供たちは「5つ」と答えたのです。APUの存在について、大人よりもよく知っていたんですね。
このように旅客機にとって大切なAPUですが、車のアイドリングと同じように、燃料の消費や二酸化炭素の排出、騒音など、環境への配慮も必要な時代となっています。そこで羽田空港や伊丹空港など国内の主要空港では、駐機中に出発直前までAPUを使用せず、空港施設から電源ケーブルや空調ダクトで、旅客機に電気や冷暖房の空気を送る方式(GPU(*2))を採用しています。
搭乗待合室の窓から眺めると、地面から伸びたケーブルやダクトが、駐機中の機体に取り付けられている様子をご覧いただけます。子供たちから尋ねられた際には、ぜひ説明してあげてください。
*1:APU=Auxiliary Power Unit(補助動力装置) *2:GPU=Ground Power Unit(地上動力装置) |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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