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コックピット日記
Captain 53
文=中村貴幸(日本航空機長)
Text by Takayuki Nakamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
“競走馬にも優しく
 いよいよ夏本番。連日の蒸し暑さを避け、夏休みを利用して爽やかな気候の北海道へ旅行される予定の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 北海道の玄関口といえば新千歳空港ですよね。太平洋を越えて、高度を下げながら空港へ近づいていくと、窓の外には緑豊かな大地が広がり、真っ直ぐに伸びる道路や点在する家々、牧場で草をはむ馬や牛の姿などの風景に、北海道の雄大さを実感させられます。
「旅客機が着陸するルートって、線の上を通るように、きちんと決められているんでしょう」
 以前、友人からこのように言われたことがあります。
 確かに、旅客機はレーダーや管制官によって指示されたルートを通りますが、最終的に重要なのはパイロットの判断であり、自らルートを決めて運航したり、着陸したりする場合もあります。
 その一つが「ビジュアル・アプローチ(視認進入)」と呼ばれる着陸方式です。これは空港の混雑状況や気象条件にもよりますが、空港の近くまでレーダーで誘導され、その後はパイロットが目視で空港を見ながら、計器などを確認して、安全に滑走路へ着陸するという方法です。
 旅客機の飛行ルートは、例えるなら自動車で高速道路を走るようなものです。空港はインターチェンジの料金所で、飛行経路は本線と考えてください。インターチェンジで下りる際、自動車は案内板に従って本線から外れ、決められた進入路を通って料金所まで進みます。着陸する旅客機も同じように、飛行経路から空港へ向かいますが、「ビジュアル・アプローチ」の場合、本線からインターチェンジへ下りる出口(分岐点)まではレーダーで誘導されるものの、その後は自分で判断して走行し、料金所までたどり着きます。
 空港周辺では、雲や風の状況など、計器やレーダーだけでは判断できない事柄があります。これらに対応し、安全に着陸を行うには、やはり操縦桿を握るパイロットの技術と経験が必要とされるのです。
 ただし、自分でルートを決めるとはいえ、着陸時には高度が下がり、ジェットエンジンの騒音も地上に届きやすくなるので、そうした面での配慮は欠かせません。特に新千歳空港の周辺には、競走馬の生産牧場が多く、競馬ファンの私としても気になるところです。
 騒音などの環境に配慮し、競走馬にも優しい運航を心掛けて、今日も日本の空を飛んでいます。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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