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コックピット日記
Captain 48
文=工藤英樹(日本航空機長)
Text by Hideki Kudo
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
“「風」と仲良く
 梅の花も咲き始め、春の足音が聞こえてきそうな季節となりました。この時期、太平洋側では晴天の日が多く、旅客機をご利用される際には、窓からの眺めを楽しみにされているお客様もいらっしゃるのではないかと思います。
「快晴の時、コックピットから眺める青空は綺麗なんだろうねぇ」
 そんな羨望の声が聞こえてきそうな気もしますが、私たちパイロットの世界ではまったく逆で、「青空は怖い、油断するな!」というのが格言となっています。
 なぜ、青空が怖いのかというと、「雲」が少ないからです。
 機内で景色を眺めているお客様からすると、雲一つない真っ青な空は見晴らしが良く、快適な運航が期待できるかもしれませんが、パイロットにとって雲は、大気がどんな状態か、揺れるかどうかなどの情報を得るための大切な手がかりです。もちろん地上で天気図を解析し、他機の情報も集めて予想はしていますが、さらに雲の種類や形状などから、どこに上昇気流や下降気流があるのか、風の急激な変化はないかなど目で確認し、揺れを予想しているのです。快晴の場合、情報源となる雲が少ないため、普段以上に気をつかわなければならなくなります。
 また、これからの時期、地上付近では目に見えない「春一番」のような突風が吹きます。季節の変わり目は気圧が不安定になりやすく、風も気まぐれです。皆様もご利用される機会の多い羽田空港は、東京湾に臨んでいるため、一日の中でも風の向きが大きく変わることがありますし、上空と地上の風が大きく異なっていたり、強い北風が吹いたかと思えば、翌日には南風に変わったりと、風を予想しづらい空港でもあります。
 風は人間の力でどうにかできるというものではありません。たとえば上空を吹いているジェット気流は、時には向かい風となり我々の運航にとってマイナスになりますが、ある時には強い追い風となって私たちの味方をしてくれることもあります。
 私たちパイロットは、この目には見えない自然、特に「風」とうまく付き合いながら安全運航を心掛けていくことが大切であり、そうした思いが「青空は怖い、……」という格言となって、先輩から後輩へと引き継がれているのです。
「風」と仲良く。次回からはフレッシュな風を送るべく、エッセイの担当を新しい機長に引き継ぎます。これまでのご愛読、ありがとうございました。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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