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コックピット日記
Captain 46
文=高桑久仁昭(日本航空機長)
Text by Kuniaki Takakuwa
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
“一期一会”を大切に
 新年、明けましておめでとうございます。皆様は新しい年をどのように迎えられたでしょうか。自宅で新しい年を迎えた方もいらっしゃるでしょうし、機内で年越しをなさった方もいらっしゃるのではないかと思います。
 私たちパイロットは仕事柄、機内や滞在先のホテル、時には空港から宿泊先へ移動するバスの中で年越しをする時があります。こうした瞬間に出合うと、実にパイロットはユニークな職業・仕事だと思わずにはいられません。
 なかでも特に変わっていると感じるのは、同僚であり一緒にフライトを担当するパイロットの関係です。通常、機長と副操縦士は、旅客機へ乗り込む前のブリーフィングで顔を合わせますが、同じ職場に勤めているとはいえ、お互いに「初めまして」と挨拶することも少なくありません。
 もちろん、お互いにパイロットとして厳しい訓練を受けているので、初めて組む者同士でも完璧に仕事をすることができます。しかし、同じ職場で働いていながら、双方が初めて出会い、国際線なら狭いコックピットの中で10数時間も二人だけの時間を過ごし、目的地へ到着して仕事を終えた後は「お疲れ様、乾杯!」と、滞在先のホテルでグラスを傾けるというのは、不思議な感じもします。
 さらには、こうして出会った同僚であっても、日本航空には約3300人のパイロットがいるため、お互いのスケジュールによっては、その後、一緒に乗務する機会がないこともありえます。そんなふうに考えると、「パイロットの世界って不思議だな」とつくづく実感させられるのです。
 こうした経験から、私たちパイロットは“一期一会”という言葉を強く意識します。旅客機を操縦するという点では毎フライト一緒ですが、一緒に仕事をする副操縦士や客室乗務員は毎回違う組み合わせですし、天気や風向、風速は常に違います。何より搭乗されるお客様や搭載する貨物が同じということはなく、フライトの後には必ず反省点や今後の仕事への糧を得ることができます。つまり、どんなに経験を持ったパイロットでも、毎回“新しい何か”に出合えることが、この職業の大きな魅力ではないかと感じています。
 3年間にわたりエッセイを担当してきましたが、次からは後任の機長へ引き継ぎます。私自身、これからも“一期一会”を大切にして、日々の安全運航に努めて参りたいと思っています。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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