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Captain 44 |
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文=川村 求(日本航空機長)
Text by Motomu Kawamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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「パイロットだから、英語はペラペラだろう。うらやましいよねぇ」
旅客機のパイロットをしていると、よく周りの方々からこのようにいわれます。
もちろん航空機の世界では、世界共通の言語として英語が使用されており、管制官とのやりとりを英語で行いますし、機内アナウンスでも英語で挨拶したりしています。ですので、簡単な日常会話において英語に不自由を感じることはそれほどありませんが、「ペラペラでしょう?」と尋ねられると、「ちょっと違うんですよ」と、心の中ではつぶやいています。
というのも、このような経験をされたことはありませんか。イギリスで話されている英語は聞き取りやすいのに、アメリカに行くと全然、分からない。フランス語やドイツ語などを母国語としている人が話す英語は何か癖があって、聞き取りにくいなど……。英語は世界中で話されている一方で、国や地域ごとに発音やアクセントに大きな違いがあります。ですので、英語が話せるといっても、世界中どこででも“ペラペラ”とはなかなかいかないものです。
それでは、「コックピットで話すのは、どこの英語なの?」と疑問をもたれると思いますが、実は「航空機の世界」独特の英語というのがあるんです。
その一例を挙げると数字の「3(スリー)」はトゥリー、「5(ファイブ)」はファイフ、「9(ナイン)」はナイナーと発音します。「1000(サウザンド)」はタウザンドとなります。管制官との交信で「ハイ」と答えるときは「Yes(イエス)」ではなく「Affirmative(アファーマティブ)」、「No(ノー)」の場合は「Negative(ネガティブ)」と返すことになっています。
空の上では、たくさんの航空機が運航していて、的確な指示の下に素早く対応することが求められます。フライト数の多い国際空港ともなると、さまざまな国の航空機が数分単位で離発着を繰り返しています。そのため、私たちが話す英語では進路や高度、スピードを示す単語、それに数字が多くを占め、それらを正確で手短に伝えることが重要となっています。
魚市場や野菜市場で“競り”の様子を見ていると、関係者以外には何を話しているのかさっぱり分からないといったことがありませんか。パイロットの英語もこうした“競り”の言葉のようなもので、私たちには便利で分かりやすい英語ですが、他の方には聞き取りにくいこともあるようです。
空の上で飛び交う特殊な英語。世界共通の専門言語がパイロットの世界には存在しています。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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